前回の「受験生に贈るメダリストの名言~パリ2024大会から学ぶ受験勉強①」につづき、今回はパリ大会の「4つのまさか」から、受験とスポーツとの共通点や受験に役立つオリンピアンの言葉などをご紹介します。
CONTENTS:
6. まとめ~合格という金メダルを獲るためにできる3つのこと
1. スポーツの祭典はシナリオのないドラマ
世界的なスポーツの祭典「パリ2024大会」が終わりました。多くの感動劇があり、改めてスポーツのすばらしさや世界平和への願いなどが実感できたのではないでしょうか。
今大会でもさまざまなドラマがありました。最後の最後まで何が起こるかわからない、まさに「シナリオのないドラマ」でした。日々受験勉強に邁進している受験生にとっては、テレビ観戦などもできなかったかもしれませんが、何が起こるかわからないという点ではスポーツも受験も同じです。
今回は前回につづき、パリ2024大会から受験勉強の教訓となる4つの「まさか」と受験に役立つオリンピアンの言葉をご紹介します。
2.柔道女子、阿部詩選手の「まさか」の号泣と「ウタ」コール
金メダル候補が2回戦敗退の大波乱
パリ2024大会柔道団体銀メダリスト阿部詩選手は、前回の東京2020大会の個人金メダリストで、今大会も金メダル連覇を期待されていた選手でした。ところがまさかの2回戦敗退でメダル獲得とはなりませんでした。
試合開始から阿部詩選手が常に優位に試合を進め、ポイントもリードしていました。誰もが阿部選手の“勝ち”を予想していました。それが、残り1分を切った時、相手にあっけなく一本を取られ負けてしまいました。一瞬のできごとでした。
賛否を呼んだ阿部詩選手の号泣と異例の「ウタ」コール
負けた瞬間の阿部詩選手は茫然自失状態で泣き崩れ、なかなか立ち上がることもできず、人目もはばからず号泣する姿が全世界に放送されました。大声で泣き叫ぶ姿に、もらい泣きする人もいえれば「みっともない」と批判する人もいました。
しかし、圧倒的に応援する人のほうが多く、会場は日本人だけでなく、現地のフランス人も他国の観客も一斉に「ウタ!ウタ!ウタ!」と大きなウタコールが起こりました。この異例の事態もまた放送され、世界中の感動を呼びました。
やはり負けたとしても、阿部詩選手のそれまでの「がんばり」が人々に伝わったからでしょう。号泣して立てなくなるほど悔しかったということは、そこに至るまでどれだけ苦しくて辛い練習をしてきたのか、そのがんばりが見えたのだと思います。
逆にそこまで悔しい気持ちになったことがある人がどれだけいるでしょうか。阿部詩選手を見て、「自分はそこまでがんばったことないかも」と感じた人も少なくなかったと思います。
阿部詩選手の言葉
阿部詩選手は個人戦の敗北の後、気持ちを切り替え、団体戦では見事に勝ちを決めて銀メダル獲得に貢献しました。その時の気持ちの切り替え方を問われたインタビューで、阿部詩選手は次のように答えています。
「本当に、一番大切な言葉っていうのは、身近な人の言葉だと思うので。普段からサポートしていただいている人たちの言葉を大切にして、(中略:次の試合まで)、日々の生活をしていました」
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阿部詩選手に学ぶ受験勉強
阿部詩選手はパリ大会まで実戦では負けなしでしたので、よく「絶対的王者」などと表現されることも多いのですが、スポーツでも受験でも、勝負事に「絶対」ということはありません。それを体現したような試合でした。
入試でも毎年あります。塾内でクラスも一番上で、公開テストなどでも常に上位に顔を出す生徒がいて、周囲の誰もが難関の〇〇中学に合格するだろうと思っていたのに、結果は不合格。本人も周囲も驚くということがよくあります。
その逆もあります。模試などではD判定ばかりで、最後の最後まで良くてもC判定しかでなかった受験生が、最後の最後で合格したというケースもあります。最後の最後まで何が起こるかわからないのはスポーツも受験もいっしょです。大切なことは最後まで油断しないこと、そして諦めないことです。
周囲のサポートが思った以上に大きな影響を与える
負けてしまった阿部詩選手にSNSなどで心ない言葉を投稿する人もいるなかで、いちばんの支えとなったのが身近な人たちの言葉のサポートでした。勝負は時として負けることもありますが、大事なことはその時の周囲のサポート力です。受験でいうなら、家族や講師陣でしょう。
阿部詩選手は幸いにして周囲の支えもあり、見事に気持ちを切り替え、団体戦では銀メダルを獲得、次のロサンゼルス大会に向け、再び金メダルを目指す気持ちにもなっているようです。
受験も負けることもありますが、そこに「がんばり」があってこそ、感動があり応援があります。たとえ1回負けてしまったとしても、それで終わりではありません。次に切り替えるためにも、身近にいる人たちはぜひ愛のある前向きな言葉でサポートしてあげてくださいね。
3. 体操男子団体に起きた「まさか」
まるでドラマ!まさかの大逆転
前回の東京2020大会では、中国にわずか0.103点届かず2位の銀メダルで終わった体操男子の日本代表。パリ大会ではその雪辱を果たすべく、金メダルを目指して臨みました。しかし、日本のエース橋本選手があん馬の演技で落下するなど精彩を欠き、6種目中5種目が終わった段階で1位の中国との差は3.267点。金メダルはほぼ絶望的な状況に追い込まれました。
残す種目は最後の鉄棒のみ。団体戦は各国3名の合計得点で競います。この時点で3点以上の開きがあるので、逆転はほぼ不可能だと思われていました。会場全体が中国の金メダルを確信しているようでした。その時まるでドラマのような「まさか」が起きたのです。
日本は3選手ともほぼミスなく安定した演技。その後の中国はプレッシャーからか、1番手の選手が着地ミス、2番手の選手は2度も落下してしまいました。まさかの痛恨のミスが重なり、なんと日本が土壇場で大逆転、0.532点差で中国を上回り、金メダルを獲得しました。最後の最後まで諦めなかった日本選手たちの執念が実った形でした。
体操男子団体に学ぶ受験勉強
パリ大会の体操男子団体から学ぶことは、この最後まで諦めない精神力です。中学入試では3科目または4科目で受験することがほとんどですが、通常なら解けるはずの前半の科目が、緊張などで全然できないということがよくあります。
1、2科目できなかったからもう駄目だと諦めるのではなく、最後の科目まで全力で高得点を目指しましょう。今回の中国チームではないのですが、最後まで何が起きるかわかりません。逆に前半ができたのに、後半になって急に焦ってしまって調子が狂ってしまう受験生もいます。逆転も可能だということです。
今大会の体操男子団体は、最後の最後まで諦めないことが大事だということを改めて教えてもらえた試合でした。そこで、パリ2024大会の立役者、金メダルを3つも獲得した岡慎之助選手の言葉をご紹介しましょう。
岡慎之助選手の言葉
「高校生の時は失敗した時にイラついたりとか、マイナスに入る時が多かったが、その(サッカー長谷部誠選手の)本に『マイナス発言は自分を後退させる』というのを見て、プラスな言葉かけを意識して取り組んでいました」
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岡選手は長谷部選手の言葉に触発され、今大会では「できるかな」や「これいけるかな」など、少しでもマイナスになるような言葉は一切言わず、前向きな言葉ばかりを言うようにしたそうです。
受験生の皆さんも、最後の最後まで自分を信じて「いける、いける」など、自分にプラスになる声かけをしてみてくださいね。
4. 卓球混合ダブルスまさかの初戦敗退
五輪の魔物はやはりいた!はりひなはなぜ負けたのか
卓球の張本智和と早田ひなの「はりひな」ペアは、パリ2024大会前の国際大会で何度も優勝していて、前東京大会の水谷隼選手と伊藤美誠選手の金メダルにつづき連覇が期待されていました。
ところが、初戦は北朝鮮のペアで戦うのは初めての相手。国際大会にほとんど出場していないペアなので、相手のデータもあまりなく、他のペアのように研究も作戦もあまりできていませんでした。はりひなペアは、序盤からミスが相次ぎ、相手には攻撃のパターンを読まれてリードを許し、そのまま敗れてしまいました。
金メダルを期待されていたはりひなペアだっただけに、まさかの初戦敗退は大きなショックとして報じられました。これぞ俗に言われる「五輪の魔物」かと痛感させられた試合でした。早田選手は試合後、次のように述べています。
早田ひな選手の言葉
「特に緊張やプレッシャーを感じず、いつもどおり試合に入ることはできました。ただ、情報量が少ないぶん、自分自身がちょっと迷ってしまったことはあったかもしれません」
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はりひなペアに学ぶ受験勉強
はりひなペアのまさかの試合から、いかに相手の対策が大事かということがわかります。相手はどんな戦術でくるのか、どんなボールを得意とし、何を苦手としているのか、それに対しどう対処すればいいのかなどです。
受験も同じですね。「志望校の傾向と対策」、いわゆる「過去問(赤本など)」をしっかりやりなさいと言われるのはそのためです。受験する学校の数年分の過去問を解き、出題傾向や難易度などを事前に把握して、時間配分はどうするか、どれを捨て問にするか、解く順番はどうするかなどを対策しておくのです。
何の対策もしないで行き当たりばったりで受験をすると、本来の実力が出せずに終わってしまうリスクが高くなります。
事前準備はどこまでやるべき?
よく第1志望校はきちんと対策しても、第2、第3志望校は滑り止めだから別にいいと軽く考える受験生がいます。変な過信は、はりひなペアのように、思いもせず足元をすくわれてしまうこともありますから十分注意しましょう。
絶対に受かると思って受験した併願校でまさかの不合格になると、パニックになって本命校でも実力が発揮できなくなる恐れもあります。併願校であっても、せめて1校は確実に合格できるよう事前の対策はしっかりやっておくようにしましょう。
5. まさかのエース不在となった体操女子団体
大会直前のまさかのショッキングニュースに世界中が衝撃!
パリ大会直前にショッキングなニュースが流れ世間を騒がせました。体操女子のエース、宮田笙子選手が飲酒喫煙問題により代表を辞退したのです。これにより、日本体操女子団体は、本来5人で出場するところを、エースを欠いた4人で出場することになりました。このまさかの衝撃ニュースは日本のみならず世界中で報道され賛否を呼びました。
この圧倒的不利なまさかの事態に、ネットは大騒ぎとなり、心ない誹謗・中傷が後を絶ちませんでした。話が大きくなり、家族のことや幼少期の頃のこと、また体操界での評判など、事件とはまったく関係のないところにまで飛び火し、宮田選手があたかも元から問題人物であったかのように扱った投稿もありました。しかし、その答えは大会予選での4人の演技にありました。
チームの信頼関係に宮田選手の人柄を思わせる
詳細は調査中ということでその経緯はよくわかりませんが、どういう状況だったにせよ、宮田選手がやってしまったことは確かによくないことで、本当に残念でなりません。日本代表となればもはや1人の問題ではなく、チームや体操界全体、ひいては国を背負っての問題ともなります。
しかし、今大会で残った4人の選手が、予選の競技中に宮田選手がプレゼントしたおそろいのヘアピンを付けて演じたり、選手入場の際に宮田選手の床の演技の決めポーズを4人で演じたりと、宮田選手へのリスペクトが随所に感じられたのです。
まるで「5人でいっしょに戦っているんだよ」とアピールしているように見えました。ここから宮田選手が今も変わらずにチームから信頼されている大切な人であることがわかり、彼女の本当の人柄が垣間見えたような気がします。
日本の体操女子団体は、エースの不在により上位8か国の決勝進出も難しいと言われていましたが、予選では大健闘の5位で決勝に残りました。最終的には8位入賞で終わりましたが、大健闘の結果で、暗いイメージのスキャンダルとは裏腹に、4人が最後まで笑顔で爽やかに演技をやりきったのがとても印象的でした。
岸里奈選手の言葉
以下は、そんな予選を振り返った岸里奈選手の言葉です。
「このメンバーでここまでやってこられてすごいうれしいなという気持ちがこみ上げてきました」
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この岸選手の言葉からも、体操女子チームがこれまでいかに良好な関係を築き、信頼し合っていたかがわかります。そこには選手だけでなく、コーチたち指導陣ともいい信頼関係が築かれていたに違いありません。それでこその大健闘だったのではないでしょうか。
体操女子に学ぶ受験勉強
受験も同様に、自分にとっていい仲間や講師と巡りあえると、つまずいた時にも助けになりますし、成績の伸びも早まります。とくに苦手教科だけでも家庭教師で補強したいと考えるのであれば、相性のいい講師を選ぶことがとても大事になります。
繰り返しになりますが、スポーツも受験も最後の最後まで何が起こるかわかりません。誰も予想もつかないまさかの事態に陥ったりすることもあります。そんな時助けになるのが、いい仲間であり信頼できる先生です。不測の事態にもきちんと愛情をもって対応してくれる講師をぜひ見つけてあげてください。
そして何よりいちばん近くにいる親御さまが、受験生のお子さまをメンタルや健康面でしっかりサポートしてあげてくださいね。
6. まとめ~合格という金メダルを獲るためにできる3つのこと
今回も前回につづき、パリ2024大会からスポーツと受験の共通点、「まさか」の事態から得る教訓や受験に役立つオリンピアンの言葉などをお伝えしました。今回はパリ大会の4つの「まさか」をご紹介しましたが、もちろんこれはほんの一部で、大会全体ではもっと多くの「まさか」があったことと思います。
受験もスポーツも目標に向かって真剣に努力し、突き進んでいくところが共通していますが、そこには「魔物」がひそんでいたりもして、思ってもみない「まさか」が起きたりします。そうなったときにきちんと対処できるよう、次の3つのことをしっかり意識しておきましょう。
①事前対策をしっかり行うこと ②「まさか」の事態に陥っても、最後の最後まで諦めないこと ③自分を信じて前向きな言葉をかけること
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そして願わくば、いい仲間や講師に出会えたら最強です!
年明けにはいよいよ受験という大きな大会に出場します。「まさか」があってもなくても、悔いのないよう全力で戦って「合格」という金メダルを手にしてください。応援していますよ!
北口榛花選手の言葉
最後に、受験生の皆さんにも近いうちこんな気持ちを味わってもらいたいという意味で、女子陸上競技のフィールド種目で初の金メダルを獲得するという快挙を成し遂げた陸上女子やり投げの北口榛花選手の言葉を贈ります。
「うれしいけど、うれしいだけじゃ足りない」
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