中学受験で秋によく起こる親子のズレとは?マズローで紐解く親子認識の相違

  • 2025.08.27
  • 受験情報

 

 

 

中学受験のお悩みとして、とくに秋に多いのが「親子間のズレ」です。このズレがなぜ起きるのか、またなぜ秋に多いのか、「マズローの5段階欲求説」を交えながら詳しく解説いたします。

 

 

CONTENTS:

 

1. とくに秋に多くなる親子間のズレ!3つの要因とは

秋に多い中学受験生保護者の悩み

親子間のズレが起きる主な3つの要因

 

2. 親子間の経験値の違い

人生経験豊富な親と経験値の低い子ども

経験値が違えば価値観も違う

 

3. 時間感覚の違い~二人三脚で走る中学受験

親と子ではスイッチが入る時期が違う!?

二人三脚で走る中学受験

 

4. 求める欲求段階の違い~マズローの欲求5段階説

マズローの5段階欲求説とは?

欠乏欲求と成長欲求

子どもの階層に合っていない要求をしていませんか?

どんどんズレが大きくなる親子と、ズレない親子

 

5. まとめ~親子間の“違い”を認識しよう

違うのが当たり前

親子喧嘩している暇はない!

どうしてもうまくいかない場合は?

 

 

1. とくに秋に多くなる親子間のズレ!3つの要因とは

 

 

 

 

秋に多い中学受験生保護者の悩み

 

中学受験生の保護者のお悩み相談として秋に多いのが、「うちの子はまったくやる気がない」や「わたしばかり焦っている」というもの。とくに秋になると「もうすぐ受験本番なのに、本人に自覚がぜんぜんない」といった相談が多くなります。

 

夏休みが明け秋になると、どこの進学塾でもいよいよ中学入試に向け「ラストスパート」に入り熱を帯びてきます。塾によっては、入試までのカウントダウンの大きなカレンダーを生徒たちに見えるように掲示し、毎日一枚ずつめくって緊張感を煽ったりしています。

 

ところが、緊張感が高まっているのは当の受験生本人よりも、どちらかというと受験生の親のほうだったりします。もちろん本人たちもそれなりには緊張感も高まってはいますが、親に比べるとそこまででもないのが実情です。

 

 

親子間のズレが起きる主な3つの要因

 

なぜ当の本人よりも親のほうが緊張感が高まるのでしょうか。このような親子間の認識のズレは毎年よく起こることです。それはいったいなぜなのか、主な要因は次の3つにあります。

 

①経験値の違い

②時間感覚の違い

③求める欲求の段階違い

 

上記3つの違いから、親子間のズレが起きると考えられます。次に詳しくみていきましょう。

 

 

2. 親子間の経験値の違い

 

 

 

 

人生経験豊富な親と経験値の低い子ども

 

当然のことですが、親はこれまでにさまざまな経験をしています。人生の中で1回または数回受験したこともあると思いますし、就職や転職、昇進など、その経験値は人それぞれですが、子どものそれとは比べものになりません

 

親が持つ人生経験の中では、悲しい思い辛い体験もあったかと思います。親であれば、自分の子どもには同じような辛い思いはさせたくないと誰もが感じるでしょう。知らず知らずのうちに力が入ってしまうのも無理もありません

 

一方、子どもはというと、まだ大きな人生経験がありません。中学受験が初めての試練ともいえるでしょう。成功する喜び失敗する怖さもまだよくわかっていません。なぜ親のほうがそんなに焦っているのか、理解できないのもそれはそれで仕方のない話なのです。

 

 

経験値が違えば価値観も違う

 

親と子の経験値がぜんぜん違うのですから、受験に対する緊張感や価値観が違うのも当たり前です。それを一方的に押しつけても、自分がイライラするだけで、決して同じにはなりません。

 

もしかすると、親は中学受験を「人生を懸けた一世一代の大勝負」と思っているのに、子どものほうは「ちょっと遠足に行ってくる」くらいの感覚かもしれません。「親の価値観=子どもの価値観」にはならないと割り切って考えたほうがいいでしょう。

 

 

3. 時間感覚の違い~二人三脚で走る中学受験

 

 

 

 

親と子ではスイッチが入る時期が違う!?

 

親は夏休み明けから志望校などを決め、いよいよ受験準備に取りかかり始めます。模試の結果などにも一喜一憂し、このままでは第一志望校に合格できないと焦り始めます。受験まで「もう数か月しかない」と焦燥感に駆られます。

 

一方子どものほうは、受験まで「まだ数か月ある」となかなかスイッチが入りません。子どもと大人では1年の感じ方が違うのは誰もが感じているところではないでしょうか。同じ1年間でも子どもの時はもっと長く感じた時間が、大人になってみるとあっという間に感じられると思います。

 

つまり、大人である親にとっては残りもう数か月と秋も早々に焦り始めますが、子どものスイッチは冬を迎える冬期講習くらいになってようやく入るというのもよくある話しです。ついに「もう受験直前だ!」と焦り始めて、親は「遅すぎっ!だから言ったでしょ」と言いたくなりますが、それが普通だと思って怒らないであげてください。

 

 

二人三脚で走る中学受験

 

中学受験は「親子の受験」とも言われています。親子二人三脚で受験するといってもいいでしょう。二人三脚を実際にやったことがある人にはわかりやすいと思いますが、二人の足は括りつけられていて、「いち、に、いち、に」と掛け声をかけながら、ペースを合わせて走ります。どちらかが速くても遅くてもうまく前に進むことはできません

 

親だけが焦って速く走っても、子どもは転んでしまいます。子どもが遅ければ親もペースを落とし、「いち、に、いち、に」と掛け声をかけて、徐々にペースをあげていくしかありません。逆に子どもが速すぎるようなら、途中で息切れしないよう少しペースを落とす必要もあるでしょう。

 

大事なことは掛け声をかけながら、ペースを合わせていっしょに進むことです。ゆっくりでも確実に一歩一歩進み、ペースが出てきたら一気に加速してラストスパートに入ります。中学受験は最後まで親子がペースを合わせ二人三脚で走る必要があることを覚えておきましょう。

 

 

4. 求める欲求段階の違い~マズローの欲求5段階説

 

 

 

 

マズローの5段階欲求説とは?

 

親子間の決定的なズレとして、「マズローの欲求5段階説」で考えるとわかりやすいので、簡単にご説明します。

 

これは、アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズローが唱えた「自己実現理論」で、人間の欲求を上図のように5段階に分類し、低次元の欲求が満たされるとより高次元の欲求を求めるようになるという心理学の理論です。

 

欲求の5段階は下記の通りです。

  • 生理的欲求⇒食欲、睡眠欲など、生存に不可欠な最下層の欲求
  • 安全の欲求⇒①が満たされることで生じる、心身の安全が確保された生活を送りたいという欲求
  • 社会的欲求(所属と愛の欲求)⇒誰かと繋がりたい、どこかに所属し存在が必要とされたいという欲求
  • 承認欲求⇒他者から認められたい、尊敬されたいという欲求
  • 自己実現欲求⇒①~④すべてが満たされて生まれる最上層の欲求で、理想の自分になりたい、自分の能力を最大限に発揮したいという欲求

 

基本的に①から1段階ずつ欲求が満たされることで、その上の階層の欲求が生じ、最終的に⑤の自己実現に到達するという理論です。

 

 

欠乏欲求と成長欲求

 

マズローは①~④までを「欠乏欲求」と表現し、⑤の「自己実現欲求」だけを別に「成長欲求」として区分しています。欠乏欲求は1人では満たされない欲求で、欠乏しているものを埋めるような欲求なので苦痛を伴います。

 

一方、「成長欲求」は自分の内から湧き上がる、自立した主体的な欲求なので、楽しみながら実現できる欲求です。欠乏欲求とは違い、結果が他者からも見えやすくわかりやすいものです。ここまでくると、例えば勉強の場合も、自らの意志で楽しく行えるようになり、自ずといい結果として周囲にも認知されます。

 

これを踏まえて次の図をご覧ください。

 

 

 

 

 

 

子どもの階層に合っていない要求をしていませんか?

 

前述の通り、「マズローの欲求5段階」は基本的に下層が満たされることで一段上の層に進むことができると考えられています。

 

お子さまは今どこの階層にいるかおわかりでしょうか。もしかするといま④の「承認欲求」が満たされていないのかもしれません。「こんなにがんばっているのに、親はぜんぜんわかってくれない。いつだって認めてくれない」と思っているかもしれません。

 

あるいは、まだ③の「社会的欲求」が満たされず苦しんでいる場合もあります。「塾ばかりで学校の友達が減ってしまった」「家でもガミガミ言われるだけで落ち着かない」と悩んでいるかもしれません。

 

それなのに、親はすべて飛ばしていきなり⑤の「自己実現欲求」を求めてしまっていないでしょうか。ここに親子の大きなズレがあり、子どもはただただ苦しくなるばかりです。

 

 

どんどんズレが大きくなる親子と、ズレない親子

 

親は子どもが「受験が近づいているのにちっとも勉強しない」「高い金を払っているのに無駄でしかない!」「いい加減にしろ!」などとヒートアップしていくばかりです。

 

一方で子どもは「親はぜんぜんわかってくれない」→「家に居場所がない」→「怒られてばかりで苦しい」と、右(ブルー)の矢印で示したようにどんどん落ちていき、最悪「もう何もやる気になれない」「すべてやめてしまいたい」と、親の望む形からどんどんかけ離れていってしまいます。

 

逆に左(黄色)の矢印で示したように、5段階の要求が順調に満たされていけば、子どもは親に言われなくても自ら進んで勉強するようになっていきます。

 

もし「親だけがこんなに焦っているのに、なぜ本人はまったくやる気にならないのか」と思ったら、一度この図を見て子どもの欲求がどこで、親はそれにどう対応しているのか冷静に見つめ直してみるといいでしょう。お互いの欲求や求めているものを理解すると、自ずとズレも解消し、気持ちがぐっとラクになると思いますよ。

 

 

5. まとめ~親子間の“違い”を認識しよう

 

 

 

 

違うのが当たり前

 

今回はとくにに多くなる「子どもに緊張感がない」や「中学入試に対して危機感がなさすぎる」といったお悩みに対して、「親子間に認識のズレ」があることついて詳しく解説させていただきました。

 

親と子が緊張感や価値観が違うのは当たり前で、親が無理やり子どもに同じように緊張感を求めるのは、余計に自分がイライラしたり喧嘩になったりするだけで何の解決にもなりません。

 

 

親子喧嘩している暇はない!

 

受験も迫ってきているのに親子喧嘩している場合ではありません。そんな時間はもうないのです。「経験値の違い」「時間感覚の違い」「求める欲求の段階違い」の3つの違いがあることを再度認識してみてください。

 

違うことが当たり前だとわかれば、きっとイライラも解消され、子どもにもやさしくなれますよ。大事な受験前です。子どもにはいつも笑顔でいてあげてくださいね。

 

 

どうしてもうまくいかない場合は?

 

それでも、どうしてもイライラして子どもに怒ってしまいそうになったら、子どもに当たる前に思いきって受験のプロ講師に相談してみましょう。不安や悩み、愚痴を聞いてもらうだけでも、気持ちが軽くなり気分がよくなります。

 

中学受験は親子の受験ですから、まずは親からイライラや悩みを解消しましょう。そして仲良く二人三脚でゴールを目指してくださいね。

 

 

 

 

 

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管理栄養士
浅田ゆうき先生

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