東京2020大会出場選手から学ぶ中学受験【第2弾】まさかの結果の受け入れ方

  • 2021.08.25
  • 受験情報

 

前回は東京2020大会メダリストから学ぶ中学受験成果の出し方」についてお伝えしました。今回は第2弾として、「まさかの結果の対処法」についてお伝えします!

 

CONTENTS:

1.史上最多のメダルラッシュ!その歓喜の裏で

2.NYタイムズが報じた「2位でも謝る日本人」

◆レスリング男子グレコローマン60キロ級 文田健一郎選手

柔道男子90キロ級 向翔一郎選手

女子テニス 大坂なおみ選手

3.日本だけではない!中国の卓球界

4.選手と受験生との違い

5.出場選手から受験生が見習うべきポイント

◆バドミントン男子 桃田賢斗選手

スケートボード女子 岡本碧優選手

◆桃田選手、岡本選手から学ぶ7つの受験ポイント

6.結果が悪かった時に親が子にするべき言動

◆結果が悪かった時のNG言動とかけたい言葉

 

7.選手から学ぶ気持ちの切リ替え方

◆体操男子 内村航平選手

◆重量挙げ女子49kg級 三宅宏実選手

◆トランポリン女子 森ひかる選手

8.まとめ~親ができること・してはいけないこと

 

1.史上最多のメダルラッシュ!その歓喜の裏で

 

 

一年延期となった東京2020大会が8月8日に無事終了し、日本は金27、銀14、銅17の計58という過去最多のメダルを獲得し、大いに盛り上がりました。

その一方で、メダル確実と言われていた選手がまさかの予選落ちするなど、さまざまな競技でいわゆる「番狂わせ」も起こりました。

 

また、銀メダルや銅メダルを獲得しても「嬉しさ」よりも金が取れなかった「悔しさ」や「申し訳なさ」の方が強い選手も見られました。表彰台に上ってメダルをもらっても、誰もが笑顔で胸を張っているわけではないことに気づかされます。

 

本来五輪大会に出場できるだけでもすばらしいことで、誇らしいことのはずです。ましてや銀メダルを取れば、ものすごいことで誇って当然です。何といっても世界で第2位の実力が証明されたわけです。

 

しかし、日本の柔道レスリングなど一部の競技では「金が取れてこその大会」的な要素があり、銀メダルでさえも「申し訳なかった」と謝罪していたのが印象的でした。世界からみてもそれは奇異なものに映るようです。

 

2.NYタイムズが報じた「2位でも謝る日本人」

 

 

8月5日の『ニューヨーク・タイムズ電子版』に次のような記事が掲載されていました。

“< Second Best in the World, but Still Saying Sorry> At the Tokyo Olympics, Japanese athletes who fell short of gold have apologized profusely ― sometimes, even after winning silver.

「<世界2位でも謝る> 東京五輪で金メダルに及ばなかった日本人選手たちは、時に銀メダルを獲得した後でさえも、執拗に謝罪する」

 

執拗に謝罪するかどうかは別として、確かに今大会で銀メダルを獲得したにも関わらず謝罪した選手がいました。

 

■レスリング男子グレコローマン60キロ級 文田健一郎選手

文田選手は、2019年の世界選手権の覇者で東京2020大会でも金メダルを期待されていました。結果は決勝でキューバのルイスアルベルト・オルタサンチェス選手に敗れて銀メダル。

 

文田選手は応援者や関係者に感謝の言葉を述べた上で、次のようにコメントしました。

・期待に応えきれなかったのが悔しい。

・不甲斐ない結果に終わってしまって申し訳ない。

文田選手の涙ながらのコメントに、思わずテレビの前でもらい泣きをした視聴者も多かったのではないでしょうか。

 

■柔道男子90キロ級 向翔一郎選手

同じく金メダルを期待されていた向選手ですが個人戦では3回戦敗退となり、メダル獲得となりませんでした。日本柔道男子勢としては、60キロ級、高藤直寿選手に始まり、66キロ級、阿部一二三選手、73キロ級、大野将平選手、81キロ級、永瀬貴規選手と4日連続で金メダルを獲得していて、日本柔道男子が「初めてメダルを逃したことになる」と報道されました。

 

この時、向選手は涙ながらに次のように語っています。

・仕方ない。これがオリンピック。

・きょうは圧倒的に勝つつもりで来ていたんですけど、結局、何を偉そうに言っても勝たなかったら話にならない。

・団体戦は気持ちを切り替えて、チームの足を引っ張らないように、日本のためにもしっかり最後までやろうと思う。

 

しかし、今東京大会から導入された柔道の団体戦の結果は、決勝でフランスに1勝4敗で敗れて銀メダル。向選手は次のように謝罪しました。

少しでもみんなのために戦いたかったのですが、足を引っ張ってしまって申し訳ない気持ちです。

 

確かに柔道の個人戦では多くのメダルを取っていただけに、団体戦は間違いなく金だろうと期待していた国民も多かったと思います。

柔道は今大会で9つの金と、実に全体の3分の1もの金メダルを柔道だけで獲得していました。当然国民の期待値は高く、それだけに選手たちにとってその重圧は計り知れなく、プレッシャーもかなり大きかったと容易に想像できます。

 

■女子テニス 大坂なおみ選手

他にも最終聖火ランナーも務めた世界トップテニスプレイヤーの大坂なおみ選手も、当然金メダルを期待されていました。ところが、メダルどころかまさかの3回戦敗退という結果となりました。

 

大坂選手は感謝の言葉を述べた上で、次のようにコメントしています。

今の自分にできるプレーをさせていただきましたが、皆さまの期待に応えることができずごめんなさい。

 

このように五輪出場選手はみな国の代表選手で、国を背負っていて期待もされている訳ですが、たとえその期待に応えられなかったとしても、決して選手を責めたり謝ったりしてもらうようなことではないはずです。しかし、なんとなく私たち国民のなかにも謝ってもらった方がどこかストンと腑に落ちると思っているようなところはないでしょうか。そこが海外の記者の目には奇異なものに映るのでしょう。

 

3.日本だけではない!中国の卓球界

 

 

このような傾向は日本だけではありません。お隣の中国でも同じような光景が見られました。金メダルの期待値が高い日本のお家芸が「柔道」と「レスリング」だとしたら、中国では「卓球」がその一つです。

 

中国において卓球は全種目金メダルが当然とばかりに中国全国民の期待を背に戦っていて、金メダル以外はすべて同じ「敗北」であるかのような雰囲気がテレビ画面上からも伝わってきます。

 

今大会では、卓球の混合ダブルスで日本の水谷・伊藤組が決勝で中国ペアに勝ち悲願の優勝し、大きな話題となりました。日本の卓球はこれまでずっと中国には勝てなかったので日本にとっては初の金メダルでした。

 

その表彰式で優勝した水谷・伊藤の二人が満面の笑顔でいるのに対し、銀メダルの中国ペアは銀メダリストには似つかわしくもない悲壮感に満ちた表情でした。終始うつむいた顔で、表彰式など早く終わって欲しいとさえ言いたげな表情に見えました。

 

銀メダルと言えば、世界の中で2番目と素晴らしい実績なのですが、本人たちにとっては金でなければ許されない、納得できない成績だったのでしょう。また、本人たちだけではなく他の中国選手団からも大きな衝撃と落胆が伝わってくるようでした。

 

4.選手と受験生との違い

 

 

実際のところ、五輪競技の結果の受け止め方に関しては人それぞれだと思います。「勝負の世界というのは甘くない。精神的にも極限まで追い込んで結果にこだわってこそ素晴らしい成績が残せる」と感じるか、「本人も周りもそこまで追い詰めることはない」と擁護するのか、さまざまでしょう。

 

前回の「東京2020大会のメダリストから学ぶ中学受験」第一弾のブログでは、選手と受験生の共通点として、どちらも「一生懸命に頑張るからこそ結果が出たときの喜びもひとしおだ」という内容のお話をさせていただきました。

 

しかし、銀メダルでも悲しむ選手たちの話は、中学受験をひかえる小学生にはまったく当てはまらないということを今回はお伝えしておかなければなりません。何が何でも金メダルを勝ち取らなければいけない(=合格しなければならない)などという重圧やプレッシャーは中学受験生には重荷すぎます

 

まだ生まれて10年そこそこの子どもたちです。頑張りの原動力となるのは、褒められたり励まされたりして「嬉しい」や「楽しい」という気持ちがあってこその話です。決して重圧ではありません。

 

ましてや前述の中国選手は最終的に決勝戦で負けたとはいえ、世界で第2位と素晴らしい成績なのです。これで「残念な結果」と思われてしまうのはあまりに酷なことです。中国ではプレッシャーに打ち勝つ選手としてあえて厳しい目を向けられているのかもしれませんが、これは百歩譲って五輪選手には当てはまっても、中学受験を目指している子どもにはまったく当てはまらないことを強く申し上げておきます。

 

それではどういった点を選手たちから見習ったら良いでしょうか。

 

5.出場選手から受験生が見習うべきポイント

 

 

冒頭で今回の東京2020大会ではたくさんの番狂わせがあったとお伝えしました。先の大坂なおみ選手をはじめ、金メダルを期待されていた世界ランク1位の選手が、まさかのミスの連続で予選敗退ということがさまざまな競技で起き、衝撃を受けました。

 

やはり五輪の大会というのは独特の雰囲気と緊張感があるようです。いくら世界選手権などさまざまな国際大会に出場していて良い成績を収めていたとしても、やはり「この祭典だけは別格で、まったく違う」と多くのアスリートが述べています。

 

そんな雰囲気にのまれてしまわないように、前回のブログ第1弾で、「本番で緊張しないためには日々の練習と日ごろの小さな大会(試験)でも全力で戦うこと」だとお伝えしました。

 

しかし、どんなに練習しても100%絶対にうまくいくという保証はありません。五輪という大舞台の独特の雰囲気と、ちょっとした心の動揺で小さなミスから、大きなミスへとつながることもあります。世界最高峰の選手が集まるわけですから、1つの小さなミスが命取りになります。たった1点や0.1ポイントの差が、表彰台に上れるか、またメダルの色にも関係してくるのです。

 

これは受験でも同じことが言えます。たとえ模試で何度もA判定が出ていたとしても、本番とはぜんぜん違います。模試は比較的慣れている会場だったり、周囲に同じ塾の仲間がいたりすることもあり、いくらかリラックスした雰囲気のなかで試験に臨めるかもしれません。しかし、本番は独特の張りつめた空気感と緊張感があり、その雰囲気に圧倒されのまれてしまうことが多々あるのです。

 

ここで金メダルを期待されていた二人の選手をご紹介します。

 

バドミントン男子、桃田賢斗選手

桃田選手は世界ランキング1位で金メダル最有力候補でした。しかし、予選リーグで世界ランキング38位の格下の韓国選手にまさかのストレート負けを喫して敗退しました。これには大会関係者のみならず多くの国民が耳を疑ったのではないでしょうか。

 

次はその時の桃田選手のコメントです。

・試合の入りはよかったが、途中から自分の気持ちが引いてしまった。

・流れを止められなくなってしまい、自分でもどうしてよいか分からず終わってしまった。

・自分に余裕がなく、気持ちが弱くなってしまっていたと思う。

 

ランキング1位の選手ですから、38位の選手には余裕で勝てると、本人はもちろん誰もが疑わなかったと思います。しかし、そこに落とし穴があります。格下のはずの相手の強打が返せなかったことで動揺して焦りが出たのでしょう。連続失点してしまい、「こんなはずがない」とどんどん焦って冷静さを失い、悪い流れを止められないまま、まさかの予選敗退となってしまいました。

 

受験でも同じようなことが毎年起きています。A判定が何度も出ていて「合格できるに決まっている」と思っている受験生ほど、1問できない問題があっただけで動揺して冷静な判断ができなくなってしまうことがあります。本当はその問題を飛ばして次の問題に進めばいいのですが、「絶対できる」と思っているだけに焦ってその問題をどうにか解こうとねばって無駄に時間をかけすぎてしまうのです。結果、時間がなくなりミスが多くなって撃沈。それを引きずって他の科目まで影響してしまい、まさかの不合格となってしまうのです。

 

たくさんの経験を積んだバドミントン界の絶対的王者、桃田選手でさえこのような番狂わせが起きるのです。まだ小学生の子どもが初めての受験を経験するのです。模試の判定はあくまで目安。A判定が出たからといって安心はできませんし、逆にE判定だからと悲観的になる必要もありません。大切なのは受験本番までいかに気を抜かず、冷静に最後まで普段通りの力を出し切れるかです。

 

スケートボード女子、岡本碧優選手

 

東京2020大会から新種目として注目されたスケートボードの選手にもヒントがありました。スケートボード女子パークは金が日本の四十住さくら選手、銀が同じく日本の開心那選手、銅が日本人の母を持つイギリスのスカイ・ブラウン選手という快挙を成し遂げ、日本人にはなんとも嬉しい結果となって大いに盛り上がりました。

 

しかし、いちばん話題となったのはメダルを獲得できなかった4位の岡本碧優選手です。岡本選手は2019年代後半には「無敗の女王」と呼ばれ、2年間無敗、向かうところ敵なしだったそうです。一度頂点まで上り詰めた岡本選手は目指す目標を失い、いささか慢心もあって練習に身が入らなくなりました。そこに大会の延期とコロナ禍で相次ぐコンテストの中止が追い打ちをかけました。追われる立場というプレッシャーもあり、直前のコンテストでは初の敗北を喫しました。それでも今大会では世界ランキング1位、当然金メダル候補の筆頭でした。

 

岡本選手ほどの実力があれば、無難な技を確実に決めるだけでメダルは取れたかもしれません。しかし、果敢にリスクの大きい大技に挑戦し続け、最後は大技の着地に失敗、転倒して4位に終わりました。

 

驚いたのはそこからです。悔し涙が止まらず、くしゃくしゃに泣いている岡本選手に各国のライバル選手たちが次々にかけより、抱擁したり担いだりして岡本選手の健闘を称えました。それは岡本選手のこれまでの実力と実績、そして今大会で見せた果敢に大技に挑んだ姿勢に心を打たれ、素直にリスペクト(尊敬)したからではないでしょうか。泣き顔だった岡本選手も、ライバルたちから称えられて最後は笑顔になり、ガッツポーズも見せていました。

 

このスケートボードならではの感動的なシーンに、SNS上の視聴者からは「涙腺崩壊した」「オリンピック初泣き」などと反響が寄せられ、海外のメディアでも取り上げられるなど、大きな話題を呼びました。現在ではさまざまなメディアや番組からオファーが殺到しているそうです。

 

以下はそんな岡本選手のコメントです。

・乗りに行ったんですけど、乗れなかったです。

・コロナで1年延期になったときに、自分の気持ちに負けてだらだらしてしまった分がすごく大きくて、そこを埋められるようにもっと練習がんばろうと思いました。

・みんなにあこがれてもらったり、みんなに応援してもらったり、好かれる選手になりたい。

・(3年後のパリ大会雪辱に向け)今回果たせなかった体験、経験をしたいです。

 

まだ若干15歳、中学3年生の岡本選手。その肩に背負うものは想像以上に大きかったと思います。今大会でたとえメダルは取れなったとしても、最後まで諦めない姿勢や悔し涙を流しながらも最後には笑顔で次に向かうその姿はキラキラと輝いていて本当に感動的でした。そこにあるのは清々しさだけで、悲壮感はまったく見られませんでした。

1回の結果が全てではないということを岡本選手が教えてくれたように思います。

 

桃田選手、岡本選手から学ぶ7つの受験ポイント

・模試の判定に一喜一憂しない(A判定でも決して過信してはいけないし、E判定でも諦めない)。

・どんなに勉強しても本番でわからない問題があるのは当然。冷静に対処する。

・成績で1位を取っても慢心しない。勉強はきちんと毎日行う。

・本番は緊張して普段の力を出せないこともあるが、最後まで諦めない。

・結果が出なくても、その結果がすべてではない。前向きに気持ちを切り替えて次を目指す。

・子どもは重圧に弱い。親がプレッシャーで押しつぶさないように注意。

・思った結果とならなくても、悔しさをバネに次に向けて準備を進める。

 

6.結果が悪かった時に親が子にするべき言動

 

 

入試本番までには、数々の模試などを受験するでしょう。毎回毎回完璧で納得のいく結果になるという事はまずありません。良かったところはしっかり褒めてあげると同時に、油断させないように引き締めが必要なところはしっかり引き締めることが大切です。

 

良かった時は本人も嬉しいのでまた頑張ろうと前向きになりやすく、ほとんどの場合問題はありません。逆に良くなかった時にはテンションが下がり、なかなか前向きな気持ちになれないので、そこは親も一緒になって落胆するのではなく、なぜそうなったのかを一緒になって考え、今度は頑張ろうという気にさせなくてはなりません。受験本番まではこれの繰り返しです。

 

スポーツでも勉強でも厳しいだけでも甘いだけでも駄目ですし、限度もあるので、厳しすぎても甘すぎても良くありません。そのあたりのさじ加減は指導者側としてもたいへん難しいものです。「万人にとってこれが正解」というものはなく、その子どもの性格によっても違ってきます。

 

大事なことは「いかにフォローできるか」です。スポーツで言えば、重要な試合ほど負けると落ち込みが激しいので、結果を受け入れて次に進めるよう、コーチが二人三脚となって選手を上手にフォローします。受験も同じです。

 

特に中学受験は親子の受験ですから、志望校が不合格となってしまうと親の方が胸が張り裂けそうになるでしょう。頑張った子どもなら、かける言葉も見つからず落ち込むわが子を直視できないかもしれません。親の方が落ち込んでしまいたくなりますし、実際そのような親御さまが多いのもまた事実です。

また、子どもがあまり頑張らなかった場合は、「ほらね。言うことをきかないからだ」と腹立たしくなり、思わず次のような暴言を吐いてしまったりします。

 

■結果が悪かった時のNG言動とかけたい言葉

次は、結果が悪かった時に親がよく言ったりやったりしてしまいがちなNG言動です。

 

・「残念だったね」と親の方がいつまでも落ち込んで暗い顔をしている。

・「ほら、だから言ったじゃない。ちゃんと勉強しないから。自業自得だね」と怒る

・「どうするの?こんなんじゃどこも受からないわよ!」と当たる

・「なぜこんな結果なの?反省して次はちゃんと合格してくれないと困る」と愚痴る

・「これまで塾代にいくらかかったと思ってるのよ」とお金の話を持ち出す。

・「〇〇さんは××校に合格したらしいわよ。すごいわね。それに比べてうちは…」と比べる

 

親御様がそう言いたくなる気持ちはわかりますが、よく考えてください。いちばん落ち込んで辛い思いをしているのは他ならぬお子さま本人です。たとえ飄々としているように見えても、それは照れ隠し。本当はとても落ち込んでいるはずです。それを親がわざわざダメ押ししてさらに傷口をえぐるようなことをしてはいけません。

このような言動は、親御さま自身のやりきれない悲しみや苦しみをお子さまにぶつけているに過ぎず、何の解決にもならないばかりか逆効果です。

 

陰で泣いてもいいですが、子どもの前で親が悲しい顔や暗い顔を見せたりするのは絶対にやめましょう

そして前を向くようなポジティブな言葉がけをしてあげてください。

 

・「よく頑張ったね。すごくいい経験をしたと思うよ」

・「最後まで諦めず頑張れたのは本当にすごいことだよ。誇りに思うよ」

・「だいじょうぶ。次はきっとうまくいくよ!」

 

 

言うのは簡単ですが、実際はそう簡単なことではないかもしれません。どうしていいかわからなくなったとき、前述した中国の卓球選手の表彰台の話とスケボー女子の岡本碧優選手の笑顔の話を思い出してください。お子さまのこれからの未来を思うとき、どちらの方がお子さまの将来をより良い方に切り開けるでしょうか。冷静に考えるとご理解いただけると思います。

 

7.選手から学ぶ気持ちの切リ替え方

 

 

思ったような成果が出せなかった場合、どのように気持ちを切リ替えたらよいのでしょうか。ここでも東京2020大会の出場選手たちからそのヒントを学びたいと思います。

 

体操男子 内村航平選手

当ブログでもご紹介させていただいたことがある体操の内村選手。4大会連続出場で、世界最高の体操オールラウンダーとして日本の体操界を牽引してきました。五輪の個人総合で2連覇の偉業を成し、団体でもリオ2016大会で大活躍、チームの金メダル獲得に貢献しました。

 

今東京大会は種目別の出場で、得意の鉄棒で金メダルを目指していました。体操界はもちろん、多くの国民の期待が高まり注目を浴びました。

 

結果はまさかの落下で、予選落ちでした。内村選手の4度目の大会は、あまりにあっけなく終わってしまいました。多くの国民がこの結果に驚き衝撃を受けましたが、やはり当の本人がいちばんショックだったと思います。

 

その時内村選手は次のようにコメントしました。

・(五輪代表選考を最後まで争った米倉英信選手に対し)土下座して謝りたい。

・すごいネガティブなことしか今は出てこないですけど、やってしまったことはとりかえしがつかない。これ以上オリンピックで演技することはできない。

・僕はたぶんもう主役じゃない。

 

内村選手のいつになく暗い表情とネガティブなコメントに、余計にショックを受けた方も多かったのではないでしょうか。

 

しかし、大会が終わった頃、改めて内村選手が取材に応じました。

・オリンピックだけは攻略法が見つからなかった。

・今は冷静に何がいけなかったのか、なぜ予選落ちしたのか振り返る余裕ができた。

・練習が足りなかった。練習をやるしかない。

・努力は裏切らないということを証明したい。

 

この時の内村選手の表情はどこかふっきれたようで明るいものでした。さすがは世界のトップアスリート、気持ちを上手に切り替えたのでしょう。何が足りなかったのか、自分で分析し、前向きに今後も努力していくという姿勢はやはりさすがとしかいいようがありません。思わず応援したくなりますし、やはり尊敬できる偉大な選手なのだと実感しました。私たち一般人にも受験生にも内村選手は見習い学ぶべきところが多いと感じました。

 

重量挙げ女子49kg級 三宅宏実選手

今大会で引退を表明した重量挙げ女子の三宅宏実選手。三宅選手はロンドン2012大会で銀、リオ2016大会で銅と2つのメダル保持するメダリストです。今回の東京2020大会で日本女子最多5大会連続出場となる三宅選手。競技人生の集大成と位置づける舞台、35歳での挑戦でした。

 

結果は6回の試技のうち、挙がったのは1回だけで、自身初の「記録なし」という結果でした。ここで三宅選手の競技人生が終わりました。

 

以下はそんな三宅選手のコメントです。

・自分の気持ちの弱さが出た。最後まで自分なりに一生懸命ベストを尽くした。

・完全燃焼、出し切った。

・父はどんな時も励ましてくれた。最後にメダルをかけたかった。

・次のことは、終わった瞬間からスタートしていると思っている。

・同じくらい情熱が注げるものを探したい。誰かの役に立てる人生であれば。

 

三宅選手の競技人生は終わりましたが、それは新たな人生のスタートでもあります。父子で掴みとった5大会連続出場を最後まで諦めずにやり切ったことは、メダル以上の達成感や充足感が得られたように感じます。そのキラキラした姿に感動し、勇気をもらった人も多いでしょう。

 

トランポリン女子 森ひかる選手

最後にトランポリンの森ひかる選手をご紹介したいと思います。森選手は2019年世界選手権とW杯で優勝。東京2020大会での金メダルを期待されていました。順風満帆に思われていた森選手でしたが、実は周囲の期待と見えないプレッシャーに押しつぶされそうになっていたと言います。

 

結果は、演技ミスで無念の途中中断。まさかの予選敗退となりました。これには実況中継していた解説者も「あー」と大きなため息をもらし、「彼女は金メダル有力候補者だったのですよ。どうにかならないのですかね。かわいそうすぎる」と思わず本音を吐露してしまったほどです。

 

以下は森選手のコメントです。

・どんどん期待されて、うれしさと苦しさが…。どんどん苦しくなって…。

・夢だったはずの舞台が怖くて、逃げたくて逃げたくて仕方なくて…。

・もう、頑張らなくていいんだと思うと、背負っていたものがスッと消えたのを感じて、安心した。苦しかったんだなと思った。どんなに苦しい日もよく逃げずにこの日まで演技した。頑張ったと思う。

 

森選手の涙が止まることはありませんでした。もしメダルが取れれば、日本初のトランポリン五輪メダリストとなったところでした。しかし、22歳の森選手にとってその重圧は計り知れなく、コメントからも本当に苦しかったのだということがよくわかります。

 

8.まとめ~親ができること・してはいけないこと

 

 

今回のブログも前回に続き東京2020大会に出場した選手たちから、受験のヒントになる言葉などをご紹介させていただきました。

 

今大会の選手たちを見てきてわかるように、あまりにプレッシャーが大きすぎると、たとえ一流選手でもなかなか本来の実力を発揮するのが難しいということがよくわかったと思います。

 

ましてや一般の小学生ならなおさらです。あまりプレッシャーを与えず、のびのび試験に向かわせてあげるのが理想です。そして、たとえ結果が悪かったとしても、1回、1回の結果に目くじらを立てるのではなく、すぐに次に気持ちを切り替えて前向きに善処することが大切です。1つの結果の終わりは次の結果を出すためのスタートでもあることを忘れないでください。

 

間違っても、子どもに「いい結果じゃなくて、ごめんなさい」などと謝らせないようにしてくださいね。

 

最後に先にご紹介したトランポリン女子、森ひかる選手の言葉で締めたいと思います。

ここまで頑張った自分を褒めたい

 

 

 

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