2025年の中学入試から、今回は大阪府の女子中最難関、四天王寺中学校について振り返ります。今年度の受験データを細かく分析、各科目の傾向やポイント、2026年の対策等について徹底解説いたします!
CONTENTS:
1.四天王寺中入試の特徴
四天王寺中の入試は、国語・算数・理科・社会の4教科型、または国語・算数・理科の3教科型のどちらかを出願時に選択して受験します。
試験時間と配点は国語と算数が各60分で120点、理科と社会は各40分で80点の合計400点満点で、得点の計算方法は以下の通りです。
<3教科型> 評価点
・国語・算数・理科の合計点×1.25
<4教科型> 評価点=下記①~③のうち最も高得点の点数
① 国語・算数・理科・社会の合計点
② 国語・算数・理科の合計点×1.25
③ 国語・算数・社会の合計点×1.25
(※医志コースは①または②の高得点で評価)
2.四天王寺中のコース制度について
■従来のコースと課題
四天王寺中には3つのコースがあります。「医志コース」と「英数Sコース」が同列にあり、その下に「英数コース」があります。
「医志コース」受験者や「英数Sコース」受験者は、合格点に達していなくても、「英数コース」の基準点に達していれば廻し合格することも可能です。「医志コース」から「英数Sコース」への廻し合格はありません。
「医志コース」と「英数Sコース」は同列ですが、例年合格者最低点は、医志コースのほうが英数Sコースよりやや高い傾向にあります。今年も医志コースの合格者最低点は275点で、英数Sコースは271点でした。
医志コースと英数Sコースの合格最低点の差が今年は4点差でしたが、昨年は3点差、2年前も4点差でした。今のコース制になった2021年には17点、2022年は14点でしたので、近年はその差が縮まっているといえます。
また、合格後に入学必須となる「英数コース専願」は、併願受験生の合格者最低点より毎年15~20点ほど低いので、四天王寺中に入学したい気持ちが強いのであれば、専願で受験することをおすすめします。
◆医志コース(募集定員:約40名)
ハイレベル「学びの質と量」で、国内外の最難関医歯薬学系大学・学部を目指すコース。
◆英数Sコース(募集定員:約40名)
医志と同等レベルの最難関国公立大学の文系・理系、及び海外の大学を目指すコース。
◆英数コース(募集定員:約170名)
最難関国公立大学文系・理系への進学を目指すコース。
上記3コースの他に、世界を目標に見据えたアスリート&アーティストを目指すコース「文化・スポーツコース(募集定員:約20名)」があります。他コースとは異なり、難関国公立・私立大学進学を目指すコースではありません。
3.2025年の入試データ
(前年比)<人>
|
募集 人員 |
志願者数 |
受験者数 |
合格者数 |
実質倍率 |
医志コース |
40 |
156(+1) |
152(-1) |
85(+2) |
1.79 (-0.05) |
英数Sコース |
40 |
128(+6) |
125(+4) |
55(-5) |
2.27 (+0.25) |
英数コース(併願) |
170 |
13(+2) |
12(+3) |
3(±0)* |
|
英数コース(専願) |
|
392(+22) |
383(+22) |
200(±0) |
|
合 計 |
250 |
689(+31) |
672(+28) |
432(-7) |
1.56 (+0.09) |
(※文化・スポーツコースは除きます。)
*英数コース(併願)の合格者は、3名のほか、医志コース受験からの廻し合格者が46名、英数Sコースからの廻し合格者から43名の計89名が追加されます。
2025年四天王寺中入試の受験者数は、昨年より増加しました。四天王寺中の看板コースである「医志コース」と「英数Sコース」はほぼ昨年並みで、英数コース(専願)が大きく増加しました。
四天王寺という学校に魅力を感じ、コースにこだわらずとにかくこの中学校に入学したい受験生が増えていることがわかり、変わらない人気の高さを表しています。
4.四天王寺中志願者の受験日程パターン
四天王寺中の受験日程パターンとしては、受験コースによってやや偏差値に差があるため、併願校も志望コースよって変わってきますが、概ね下記のような受験パターンとなっています。
前受け校 |
・愛光(愛媛)・岡山(岡山)・岡山白陵(岡山) |
|
1日目 1/18(土) |
2日目 1/19(日) |
3日目以降 1/20(月) |
<午前> ・四天王寺(大阪)
<午後> ・帝塚山(奈良) ・大谷(京都) ・金蘭千里(大阪) ・雲雀丘(兵庫) |
<午前> ・清風南海(大阪) ・帝塚山(奈良) ・金蘭千里(大阪) ・神戸海星(兵庫) ・大阪桐蔭(大阪) <午後> ・西大和学園(奈良) ・高槻(大阪) ・大谷(京都) |
・洛南高附属(京都) ・大阪桐蔭(大阪) ・京都女子(京都)
【4日目以降(1/21~)】 ・清風南海(大阪) ・大阪桐蔭(大阪) ・開明(大阪) ・関西学院(兵庫) ・甲南女子(兵庫) |
まず統一入試日前に前受け受験として愛光や岡山白陵や岡山を受験し、統一入試日初日午前に本命の四天王寺中に臨みます。その日の午後にも受験するなら、帝塚山、大谷、金蘭千里、雲雀丘などとなります。
2日目は午前に清風南海、帝塚山、金蘭千里、神戸海星、大阪桐蔭などを受験、午後は西大和、高槻、大谷などを受験するパターンが多いようです。
四天王寺中の掲示による合格発表は3日目の午前中、Webによる発表が午後にあるので、3日目までは受験が続きます。3日目は、洛南高附、帝塚山、大阪桐蔭、京都女子などを受験し、合否の結果次第で、4日目以降に清風南海や大阪桐蔭、開明、関西学院、甲南女子などが考えられるでしょう。
5.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の2025年度四天王寺中合格者数は多い順に下記の通りでした。
(前年比)<人>
浜学園 |
馬渕教室 |
希学園 |
日能研 |
能開センター |
130(+22) |
90(-12) |
65(+16) |
59(-1) |
59(-21) |
進学館 |
SAPIX |
第一ゼミナール |
成基学園 |
|
16(+6) |
8(+1) |
3(±0) |
2(+1) |
|
昨年に一昨年と増加していた四天王寺中の合格者数ですが、2025年の今年は昨年と比べ7名減少となりました。各塾の合格者数の増減幅も例年より大きくなっています。
2位の馬渕教室は昨年100名を超える合格者を出し、トップの浜学園に6名差にまで迫りましたが、今年は浜学園が大きく増加し、馬渕教室が昨年増加分くらい減少しましたので、再び浜学園と馬渕教室の差が大きく広がりました。
昨年3位だった能開センターは、今年の合格者数が20名以上減少し、4、5位争いとなりました。逆に希学園の合格者数が16名増加し、昨年の5位から3位に上昇。今年他の難関校でも躍進の目立つ進学館は、四天王寺中でも大きく合格者数を伸ばしました。
6.科目別成績データ
四天王寺中合格者の各教科の平均点と受験者平均点との差を表したものが下記の表です。
(前年比)<点>
|
受験者平均 |
合格者平均 |
合格者平均との差 |
合格者最高点 |
国 語 |
67(-14) |
72(-14) |
5(±0) |
101(-6) |
算 数 |
70(-10) |
80(-11) |
10(-1) |
120(±0) |
44(±0) |
48(-1) |
4(-1) |
76(-4) |
|
社 会 |
59(+3) |
62(+3) |
3(±0) |
78(+1) |
合 計 |
243(-26) |
266(-27) |
23(-1) |
|
(※国語、算数は各120点、理科、社会は各80点の400点満点)
四天王寺中の2025年入試は、昨年一昨年と2年連続で大きく易化した国語と算数が予想通り難化しています。理科は昨年大きく難化し、例年と比較しても難しい試験でしたが、今年度も昨年と同程度に高い難易度の試験でした
7.2025年度入試からみる科目別の傾向と対策
今年度の四天王寺中入試を参考に、教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語
【試験時間・配点と構成】
今年も例年通り60分120点満点の試験で、大問3題構成でした。問題用紙はA4の縦開き冊子形式(開くとA3サイズ)で、今年は昨年より1ページ増えて12ページでした。空白が少なく文字で埋め尽くされているような問題用紙なので、かなりボリューム感があります。
大問3題は、論説文2問と物語文1問の3題構成でした。年度により論説文と物語文、随筆文の3題構成の場合もあります。漢字や語句などの知識問題は、各大問の中の小問で出題されます。
【難易度】
四天王寺中の2025年国語入試は、昨年に比べ大幅に難化しました。昨年まで3年連続易化していたので、ある程度難化予測はできましたが、今年度の試験は予想以上に難化し、難しい試験となりました。
昨年は受験者平均点が81点(得点率67.5%)でしたが、今年の受験者平均点は67点(得点率55.8%)と大きく下がりました。通常の平均は70~75点くらいなので、例年と比較しても難度が高かったことがわかります
【傾向と対策】
四天王寺中の国語入試の特徴は、まず多くの文字数を読まされる試験だということです。今年も1万字以上の文字数を読まされることになりました。昨年も文字数は多かったのですが、今年はさらに増えました。
とくに大問1の中の小問では別の資料も読まなければならず、相当な文字量を読むことになりました。文字を読むだけで時間に追われることになったのではないでしょうか。これも受験者平均点が下がった要因の一つかと思われます。
四天王寺中の国語は、問題文の文字数が多く高度な読解スピードが要求されますので、読解対策が必須となります。文字量の多い過去問や問題集などで、時間を計りながら演習するといいでしょう。
四天王寺中の国語試験の解答については、他の難関中学と比べてとくに記述解答が多いわけではなく、記号選択や本文からの抜き出しが多い傾向にあります。
今年の記述は55字以内、35字以内、45字以内などやや短めの記述で、80字や100字のような長い文章の記述が出題されることはほとんどありません。しかし、短文記述だからといって決して簡単というわけではなく、指定された文字数で端的にまとめる記述力が必要です。
どのような文字数指定にも対応できるようにしっかり対策しておきましょう。
また、漢字や慣用表現などの知識問題は、例年さほど難度の高いものではないので、確実に得点源としたいところです。ミスのないよう演習を重ねましょう。
◆算数
【試験時間・配点と構成】
60分120点満点の試験で、問題用紙は例年通りA4横開きの冊子形式9ページでした。今年も解答用紙は別にあり、式や解き方を書く欄はなく、解答のみを書く方式です。
今年は昨年より大問が1題増えて大問8題となり、小問は22問でした。例年は大問7題構成の小問20問前後です。
【難易度】
四天王寺中の2025年算数入試は、大きく難化しました。昨年に比べ、受験者平均点も合格者平均点も10点ほど下がる難しい試験となりました。それでも、昨年がたいへん易しい試験だったので、概ね例年並みに戻ったともいえます。
【傾向と対策】
例年大問7題構成の四天王寺中算数が、今年は大問8題となりましたが、構成内容は大問1の計算問題から始まり、その他出題単元に大きな変化はありませんでした。計算問題以外の頻出単元は、今年もそうでしたが、「平面図形」「立体図形」「速さ」「場合の数」です。
大問1の計算問題は得点源となるところですので、取りこぼしは避けなければなりません。四天王寺の算数は、出題順に関係なく、大問の中でさまざまな難易度の問題がランダムに出題されています。
今年も最後の大問8の立体図形の問題が最も難しい問題でしたが、中盤の大問4も難問で、手が止まってしまった受験生も多かったのではないでしょうか。
大問4以降の大問5~7の問題のほうが解きやすい問題だったかと思われます。四天王寺中を受験するなら、今年度の大問7のような「推論の問題」は慣れておくべきでしょう。
難問に時間をかけすぎずに、解ける問題でしっかり点数を稼げるように問題の取捨選択をするなど、上手に解き進めていかなければなりません。とくに英数コースを志望するならば、難問は捨て、易問を確実に解き切ることが大事です。
また、前述の通り四天王寺中の答案用紙は解答のみを書く形式です。いくら解き方が正しくても最後に計算間違いをしたり、転記ミスをなどのケアレスミスをしたりしてしまうと一点にもなりません。普段から見直しの徹底を怠らず、ケアレスミスをしないように日々取り組んでおきましょう。
※ケアレスミスの対処法については、下記のブログ「3.算数でよくあるケアレスミスとその対処法」で詳しくご紹介していますのでご参照ください。
↓↓
『得点アップにつながる答案用紙の書き方!ケアレスミスをしやすいタイプと対処法』
◆理科
【試験時間・配点と構成】
40分80点満点の試験で、問題用紙はA4の冊子形式で12ページとほぼ例年通り。今年も大問4題構成で物理・化学・生物・地学の各分野からほぼ均等に出題されていました。小問数40問前後もここ数年変わっていません。
【難易度】
四天王寺中の2025年理科入試は、2023年から3年連続で難化し、例年と比較しても難度の高い試験となりました。今年度は少なくとも昨年よりは易化すると考えられていましたが、昨年と同程度の難度の高い難しい試験でした。
今年は最初の大問1の地学から難度の高い問題が出題されました。南半球の天体観測に関する問題で、小問内には作図や記述もあり、思いがけず時間を費やしてしまったかもしれません。
【傾向と対策】
四天王寺中の理科入試は、例年12ページもある冊子形式の問題用紙で、文字も詰まっていてボリューム感があり、かなり多くの文字数を読まされます。文章の中からヒントを見つけ、解き進めていくような思考問題が多いので、スピーディーにかつ必要な内容を読み落とさないような読解力が必要です。
40分と試験時間が短く、小問数は40問前後と多いので、簡単な知識問題で不必要に時間を使いすぎないように注意しましょう。
また、今年もそうですが作図や文章による記述解答も毎年出題されています。過去問などを含めしっかり対策をし、次年度以降出題があっても「いつも通りだな」と余裕をもって解けるようにしておきましょう。
四天王寺中の理科は物理・化学・生物・地学の各分野からほぼ均等に出題がありますが、出題順序は年度により変わります。今年は地学→化学→生物→物理の順でした。物理分野が最後の大問4に出題されることが多く、過去5年で4回ありました。
物理分野では計算問題を含め難問が多いのですが、物理分野の小問の中には今年も簡単な知識問題(「ガラス面で光の向きが変わる現象を何というか」→「屈折」)もありました。
とくに今年のように難度の高い試験では、点数の取れる問題で「いかに確実に点を取るか」、また「問題の取捨選択」や「時間配分」など、点数を取る試験テクニックも合否を分けるポイントとなったでしょう。
◆社会
【試験時間・配点と構成】
40分80点満点の試験で、問題用紙はA4の冊子形式で昨年より2ページ減って14ページでした。図や表、イラスト、写真などが多く使われていますので、さほど文字数を読まされることはなく、ページ数ほどのボリューム感や威圧感はないでしょう。
今年を含め例年大問4題構成で、歴史・地理・公民の各分野から出題があります。出題割合としては地理と歴史分野が4割、公民分野が2割ほどです。やや地理と歴史に偏りのある構成となっています。
【難易度】
四天王寺中の2025年社会科入試は、概ね例年並みの難易度でした。例年、受験者平均点が60点弱くらいで、今年度も59点でした。昨年が56点だったので、昨年に比べるとやや易化したといえるかもしれません。
四天王寺中の社会科では毎年あまり差がつかず、今年も例年通り受験者平均点と合格者平均点の差は約3点でした。
【傾向と対策】
四天王寺中の社会科は、全体的に基礎知識を問う問題が多く、あまり深くまで問われない傾向にありますが、さまざまな範囲から出題されますので、歴史・地理分野を中心に幅広く学習しておく必要があります。
小問数は例年50問弱と多く感じますが、用語解答や記号選択がほとんどなので、あまり時間に追われることもないでしょう。
毎年記述解答の問題が1題出題されます。記述字数は例年30~40字程度ですが、今年は60字とやや長めの記述でした。問題自体はさほど難しくありませんが、決められた字数にまとめることに頭を悩ますかもしれません。過去問や問題集などでどのような字数にも対応できるよう対策しておきましょう。
公民分野では今年も「北陸新幹線」「新紙幣」「ノーベル平和賞」など、さまざまな時事問題が出題されました。日ごろから新聞やニュースなどを見て国内外の出来事に関心を持つようにし、家族で食事の時などに、勉強っぽくではなく楽しく時事会話することをおすすめします。試験勉強にも親子のコミュニケーションにもなり一石二鳥ですよ。
8.まとめ~四天王寺中合格への道~
総合進学セミナーには四天王寺中に特化して指導できる講師も多く在籍しています。毎年のように四天王寺中志望の受験生を指導しているため、入試傾向にも精通しています。お子さま1人ひとりの現状を踏まえ、入試までの限られた時間を無駄のない効率的な指導で合格を目指します。
四天王寺中受験はもちろん、併願校の選定など、中学受験に関するお悩みがあったら、お気軽にご相談ください。
四天王寺中対策もお任せください!
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