受験生の食事 〜タンパク質・アミノ酸編〜

  • 2021.04.27
  • 受験レシピ




前回は、受験生にとっての炭水化物の重要性や効率的な摂り方についてご紹介しましたが、今回は、脳の思考力、記憶力、集中力だけでなく受験生の体調にまで影響する、タンパク質・アミノ酸についてのお話です。
 

タンパク質と聞くと筋肉の材料というイメージを持つかもしれませんが、タンパク質は脳、内臓、筋肉、骨、血液、皮膚、ホルモン、神経伝達物質に至るまで体の細胞の全てを形づくっています。

その量は体重の約20%を占めており、水分(体重の約60%を占める)を除くと体のほとんどはタンパク質でできています。


体の全てを構成するタンパク質は約10万種類もあり、それらは20種類のアミノ酸の組み合わせにより作り出されています。


<イメージ図>

膨大なアミノ酸の組み合わせから様々なタンパク質が生まれ、
私たちの体はつくられている!


このように体のもととなるタンパク質を作り出すアミノ酸は、私たちが生きていく中で欠かせない多くの働きを担っているのですが、今回は、その中でも長い受験勉強を乗り切り、合格に1歩でも近づくために有用な働きをするものをご紹介します。

 

・BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)


BCAAとは必須アミノ酸(体内で合成できないため、食物から摂取しなければいけないアミノ酸)である、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つの総称です。
この3つは化学構造式において枝分かれしているため、分岐鎖アミノ酸とも呼ばれています。

BCAAは、脳などでエネルギーとして使われたブドウ糖を再利用し、再びエネルギーを生み出す際に必要なアミノ酸です。
このブドウ糖のリサイクルシステムがあるおかげで、私たちは適正な血糖値をキープし、高い集中力を長時間保ったり、記憶力をアップさせることができます。

また、BCAAを十分に摂取しておくことで、勉強がはかどらない、やる気が起きない、効率が悪くなった、眠いなどの脳内疲労が軽減されるという研究報告もあります。
 

<多く含む食品>
マグロ、カツオ、アジ、さんま、肉、卵、大豆製品、牛乳 など



・アルギニン


アルギニンは、血流の流れを良くし、肝臓機能を強くする力があり、脳の疲労物質でもあるアンモニアを尿に変え体外に排出する働きを活発にしてくれます。

アルギニンは、脳の血管を拡張して、脳内の血流量を増やす働きのある一酸化窒素(NO)の生産を高めてくれます。
このため、アルギニンを補給するとNOがたくさん作られ、より多くのエネルギーと酸素が運ばれて脳の働きが活発になると考えられています。


<多く含む食品>
大豆、マグロ、卵黄、うなぎ、ニンニク、牛肉 など

 


・グルタミン


受験合格の一つの鍵となるのが体調です。
日頃から万全な体調を維持するために欠かせないのが、ウイルスなどから体を守る免疫力ですが、グルタミンはその免疫細胞(マクロファージ、リンパ球など)を増やす働きがあります。

またグルタミンには、小腸粘膜のエネルギー源として作用するとともに、胃腸の粘膜を守り、傷ついた粘膜を再生させる働きもあるため、受験勉強による不規則な食生活や、ストレスからくる内臓不調の軽減と疲労回復によるやる気の維持にも有効です。
グルタミンは、熱や酸に弱いため生で食べられる食品からは効率よく摂取できますが、食事のみでは不足しやすくなります。


<多く含む食品>
牛乳、チーズ、マグロ、鶏卵 など

 


・チロシン


チロシンは体内でフェニルアラニン(フェニルアラニンは体内で作ることができない必須アミノ酸で、食物などから摂取することが必要です。また、フェニルアラニンが有効に働くためにはビタミンCが必要なため、果物や、野菜と一緒に摂取すると良いです。多く含む食品:牛レバー、鶏胸肉、マグロ など)から合成され、脳を興奮させる神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン など)の原料となり、脳を覚醒させて集中力を高める働きがあります。

また、満足感をもたらすホルモンや、精神を安定させる神経伝達物質の原料でもあるため、精神がうつ状態時には、チロシンの脳内濃度が低下していることが原因の一つとなることもあります。


<多く含む食品>
竹の子(竹の子を切ったり、茹でた際に出てくる白い粉やかたまりがチロシン)、チーズ、牛乳、卵、肉類、納豆、味噌など




受験に役立つアミノ酸の魅力をご紹介しましたが、これらタンパク質に含まれるアミノ酸は食事から摂ったとしても、消化・吸収されるまでに3〜4時間ほどかかります。

疲労を軽減したい、勉強効率をあげたいからと言ってすぐに効果が得られるものではないため、常に十分な量のアミノ酸を体内に満たしておくことが理想的です。


また、必須アミノ酸には特有の性質があり、タンパク質の合成は一番量の少ない必須アミノ酸のレベルに合わせられます。
つまり、ほかに量の多いアミノ酸があってもそれらは使われないのです。


そのため、日頃から様々な食材を食べることで、不足するアミノ酸や栄養素を補い合えるよう、毎食ごとの食事バランスが重要になってきます。

食事で十分確保できない場合はサプリメントや栄養機能性食品なども合わせて、自分にあった摂取のスタイルも考えてみてください。

 

<レシピ>

春の天津あんかけ丼




【材料】(2人分)

・豚肉薄切り(ロースやバラ)……150g
・竹の子……80g
・スナップエンドウ……6本
・干ししいたけ……3枚
・ニンニク……1片
▼▼▼ A ▼▼▼
・鶏がらスープ(顆粒)……小さじ2
・しょうゆ……大さじ3
・さとう……大さじ2
・みりん……小さじ2
・片栗粉……大さじ1
・干ししいたけ戻し汁……200ml
▲▲▲ A ▲▲▲
・酢……小さじ2
・卵……3個
・ご飯……2人分


【作り方】

①干ししいたけはたっぷりの水(200ml以上)で戻して、小さめの1口大に切る。
竹の子も小さめの1口大に切り、スナップエンドウは3等分に切り、ニンニクはみじん切りにする。

②豚肉は軽く手のひらで握り丸めて小さめの1口大にして、小麦粉(分量外)をまぶす。
*豚肉は薄切りを丸めて使うことで、柔らかくジューシーに仕上がります。

Aの調味料を全て合わせて混ぜておく。

④フライパンに多めの油をひいて、丸めた豚肉を揚げ焼きにする。

⑤豚肉がきつね色になったら、キッチンペーパーで余分な油を拭き取る。
そこに、ニンニクを入れ香りが立ってきたら、しいたけ、竹の子、スナップエンドウを入れて炒める。

⑥全体が炒まってきたら、Aの調味料を加え(入れる直前にかき混ぜる)、とろみがついたら酢を回し入れ、さっとかき混ぜて火を止める。
*酢は熱で酸味が飛びやすいので、一番最後に加えて熱しすぎないように注意して下さい。

⑦ボウルに卵を割り塩をひとつまみ加え混ぜて、熱したフライパンに油(あればごま油)をひき、卵を1/2流し入れ半熟状態になったら火を止める。
(同じ要領でもう1枚焼く)

⑧器にご飯を盛り、その上に半熟卵焼きをのせ、⑥のあんをかけたら出来上がり。




竹の子に豊富に含まれているチロシン(脳を覚醒させて集中力を高める働きがある)は、炭水化物に含まれるブドウ糖と一緒に摂取することでより多く脳に送り込まれるため、ご飯などと組み合わせることが脳にとっては理想的です。

今回はスナップエンドウを入れましたが、その季節に合わせた旬の食材を入れて楽しんでみて下さい。

 

マグロと香味野菜のタルタルステーキ風ユッケ




【材料】(1人分)

・マグロ(刺身用)……80g(1人前)
▼▼▼ A ▼▼▼
・コチュジャン……小さじ1
・ごま油……小さじ1
▲▲▲ A ▲▲▲
・卵(卵黄)……1個
・きゅうり……2cm(20g)
・白ネギ……4cm(10g)
・セロリ……2cm(10g)
・パクチー……適量
・白ごま……適量
・焼き海苔……適量


【作り方】

①きゅうり、白ネギ、セロリ(スジがあればピーラーなどで除く)はみじん切りにする。
パクチーは粗く刻み、卵は卵黄と白身に分ける。

②マグロを包丁で粗めにたたいて、Aを加えて全体が混ざるように更にたたく。

③器にマグロを盛りその上に卵黄を乗せ、周りにきゅうり、白ネギ、セロリ、パクチー、白ゴマを盛り付ける。

④食べる直前に全部をよく混ぜ合わせ、たっぷりの焼き海苔(刻んだもの)を乗せたら出来上がり。

 


マグロは脳にとって有用な働きをするアミノ酸を多く含むほか、脂にはDHA、EPAなどの必須脂肪酸(体内ではほとんど作ることのできない脂肪酸)も多く含み、脳や神経組織の発育や機能維持に効果が期待されます。

また、DHAは酸化しやすい性質もある為、特に鮮度のいいものを脂ごと食べられるお刺身などで効率よく摂取する事ができます。

受験生にとっては抵抗のある刺身などの生魚も、食中毒予防の抗菌効果が強い香味野菜などと一緒にすると、少し安心して食べることができると思います。

 

 

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管理栄養士
浅田ゆうき先生

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