受験生の食事〜食べた物で心をつくる①

  • 2021.11.26
  • 受験レシピ

現代の日本社会は経済的に豊かで、医療も整い、科学・機械技術が高度に発展し、より便利で快適な生活がおくれるようになりました。

しかし、一方で「ストレス社会」と言われるように、私たちの周りには様々なストレスが増え、それらが健康に大きな影響を与えるようにもなってきました。

子供も例外ではなく、特に受験を控えた子供達においては、学校や日常の生活に加え受験勉強という新たな課題が増えるわけですから、そこから発生するストレスもやはり大きなものとなります。

ストレスは、私たちの心に様々な影響を与えます。
心の状態が不安定であれば、もちろん勉強においてもやる気が出ない集中できないといったことが出てきますし、それが結果にも大きな影響を与えます。

逆も然りであり(適度な緊張やストレスにより勉強がはかどる、能力が伸びる)、受験勉強や、試験当日に力を発揮するための一つの鍵を握っているのは「心の状態」なのです。

その「心」もまた、私たちの体同様に食べた物から作られていることをご存知でしょうか?
今回は、このような食べ物と心の関係についてご紹介したいと思います。





【心の安定は脳内物質のバランス!】

私たちが日々生きるために、多くの指令を司っているのが脳であり、脳から分泌されるホルモン様物質や神経伝達物質は、私たちの心身の健康を保つために働いています。

よく知られているもので、アドレナリンがあります。
アドレナリンは、外部からの危険や刺激、ストレスなどに反応して放出され血圧、心拍数、血糖などを上昇させることによって、その状況に対処しやすい状態を作ります。

心の面では、闘争心ややる気、緊張といった状態になりやすい一方で、過剰に放出されると強い不安やパニックなども引き起こします。
アドレナリンを制御して心を落ち着かせ、安定させる働きを持つ神経物質をセロトニンと言い、このように脳内物質が互いにバランスを取ることによって、心の状態が保たれているのです。

 

【心(脳内物質)を作る栄養素】

私たちの心の状態は脳内で作られる神経物質と密接に関わっているのですが、これらの脳内物質の元となるのが、タンパク質の構成成分であるアミノ酸です。
様々なアミノ酸に、必要な栄養素が加わり各種の物質がスムーズに作られます。
例えば、アミノ酸からノルアドレナリンが作られる際にはビタミンBや鉄ビタミンCなどが必要となります。



 

【栄養不足が引き起こすバランスの乱れ】

上記のように、心のバランスを司る脳内物質を一つ作るにも多くの栄養素が必要です。
そのため、様々な理由で栄養が不足すると、合成される脳内物質の量が減少し心の安定にも影響を及ぼしてきます。
特に、現代の日本人においては次のような不足が多くみられます。


◎ストレスによって消耗される栄養素

ビタミンB・ビタミンC

ストレスがかかると体内でビタミンB、ビタミンCが大量に消耗されます。
また、そのストレスに対処するための脳内物質を作り出すためにも、これらの栄養素が多く必要となります。
ストレスは、人間関係などの精神的なものだけでなく、気温、騒音、睡眠不足などの外的因子も含まれ、私たちは知らず知らずのうちに多くのストレスにさらされています。
そのため、これらの栄養素が日々消費され不足に陥っている可能性が高いのです。



◎慢性的に不足しがちな栄養素(特に女性において)

鉄は、セロトニンやメラトニンといった心を落ち着かせ、安定させる働きをもつ脳内物質を作る際にも必要な栄養素です。
しかし、この鉄は体内での吸収率が悪いことに加え、運動による汗や、女性では月経などによっても体外へ排出されるため、慢性的に不足している人が多いです。
また、不足していてもほとんどの人が自覚症状がないため、不足に気がつきません。
しかし、日々の不定愁訴(頭痛、めまい、肌の不調、肩こり など)や気分の落ち込みなど、病気ではないので放っておきがちな体の不調と深く関係しているため、日頃から意識して摂取する必要があります。

<鉄分摂取のPOINT>
・鉄には植物性食品に含まれている非ヘム鉄と、動物性食品に含まれるヘム鉄があります。
非ヘム鉄に比べ、ヘム鉄の方が体内での吸収率が6倍近く高いため、鉄を食品から摂取する場合は動物性食品から多く摂るようにしましょう。
・鉄は、タンパク質やビタミンCなどと一緒に摂ると吸収が促進されるため、これらの栄養素も一緒に摂るようにしましょう。



この他にも、食事によって心(脳内物質)のバランスが乱れることや、多くの日本人の食生活で不足しやすい栄養素が脳内物質に大きく影響することがあります。
次回、それらについても詳しくご紹介したいと思います。

 

<レシピ>

体と心が喜ぶ!レバーと豆のトマト煮込み



【材料】(4人分)

・鶏レバー……200g
・ゆで大豆……100g
・ベーコン……100g
・玉ねぎ……1個
・にんにく……1片
・トマト缶……1缶(400g)
・水……100ml
▼▼▼ A ▼▼▼
・砂糖……大さじ1〜1/2
・しょうゆ……小さじ1/2
・塩……小さじ1/6
▲▲▲ A ▲▲▲
・オリーブオイル……大さじ1
・ローリエ……1~2枚
(・あればローズマリー……1枝)


【作り方】

① 玉ねぎとにんにくはみじん切りにし、ベーコンは5mm角に切る。

② 鶏レバーは白い脂肪部分を取り除き2cm程に切って、氷水の中に入れて手でかき混ぜ洗う。これを3回ほど繰り返して、水気をよく切り、塩(分量外)を少々まぶす。

③ フライパンに油を少々(分量外)ひいて、鶏レバーを焼き色がつくまで炒める。

④ 鍋にオリーブオイル、にんにくを入れて火にかけ、香りが立ってきたら玉ねぎ、ベーコンを入れ玉ねぎがしんなりするまでよく炒める。

⑤ 水を加えて5分程煮たら、トマト缶、ゆで大豆、鶏レバー、ローリエ、ローズマリーを加えてさらに、弱火〜中火で15分煮込む。途中、焦げないようにかき混ぜながら火を調整する。

Aの調味料を加えて最後に1~2分煮たら出来上がり。
*トマト缶の酸味を見ながら、砂糖の量をお好みで調整して下さい。
*最後に、お好みでチーズをかけても美味しくいただけます。

 


鉄分が豊富な食材の代表といえばレバーですが、独特の臭みなどから苦手な人も多く、料理のレパートリーにも困りがちな食材です。
今回は、そんなレバーをお子さんでも食べやすいように、トマトやにんにく、ベーコン、ハーブなどと合わせました。

レバーは、しっかりと洗い、一度焼くことで臭みが抑えられ食感も食べやすくなります。そこに食物繊維やビタミンBが豊富な大豆を合わせて、不足しがちな栄養をたっぷり摂れる一品にしました。
また、トマトに多く含まれているGABAは神経伝達物質の一つで、脳に酸素や血流をめぐらせたり、神経をリラックスさせたりする働きをします。
GABAは熱に強く、水に溶けやすい性質があるので、今回のようにトマト缶などで汁ごと食べられる料理で摂取するのもオススメです。

 

鰹のたたき〜すだちと梅ダレを添えて〜



【材料】(2人分)

・鰹のたたき……1/2柵(160~180g)
・すだち……1/2個
・かいわれ大根……1/2箱
・玉ねぎ……1/4個
▼▼▼ A ▼▼▼
・梅干し……1個
(あれば、はちみつ梅)
・みりん……大さじ1
・しょうゆ……大さじ1/2
・おろしニンニク……小さじ1/4
▲▲▲ A ▲▲▲


【作り方】

① 梅干しは種を除いてみじん切りにし、Aと一緒に小鍋に入れ火にかけ軽く沸騰させたら、火を止めて常温まで冷ましておく。

② 玉ねぎは薄くスライスし水にしばらくさらした後、水気をよくきる。

③ かいわれ大根は根元を切って、食べやすい長さに切る。すだちはよく洗って薄くスライスする。

④ 鰹のたたきを食べやすい大きさに切り、お皿に並べる。その上に、かいわれ大根、玉ねぎを盛り付け、最後に①の梅ダレとすだちのスライスを添えたら出来上がり。

 


夏の終わりから秋にかけてスーパーなどにたくさん並ぶ鰹のたたきは、春と秋の2回旬があります。
特に秋の鰹は戻り鰹といって脂がのって濃厚な味わいが特徴です。

鰹は吸収率の良いヘム鉄を豊富に含んでいるだけでなく、タンパク質も豊富なためさらに鉄分の吸収率はアップします。
それだけでなく、ストレスを和らげるホルモンの合成に関わる、パントテン酸(ビタミンB郡の一種)も含まれています。

また、これに合わせたすだちはスライスして皮ごと食べることでビタミンCがより多く摂取できる上、鰹は少し生臭くて苦手という人も、すだちと梅ダレと一緒に食べるとあまり気にならずにさっぱりと食べられますので、ぜひ一度作ってみて下さい。

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管理栄養士
浅田ゆうき先生

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