食べた物で集中力が作られると聞くと、少し大げさに聞こえるかもしれませんが、身体と同様に私たちの心や知的機能も食べた物によってできています。
知的機能は勉強や訓練することでその能力は伸びますが、それらの土台となるものはまさに食べた物によって作られているのです。
そのため、食べた物や食事法によってその働きや能力は左右され、集中力や記憶力といった受験勉強において求められる機能にも影響を与えます。
そこで今回は、この目に見えない力をより良い状態で発揮できるための食事についてご紹介します。
◎食べた物で作られる集中力
私たちの気分や感情といったものは目には見えませんが、これらは体内の神経伝達物質(ホルモン)によって大きく影響をうけます。
例えば、セロトニンという物質は心の落ち着きや幸福感を感じるときに分泌され、楽しく意欲的な感情にはドーパミンという神経伝達物質が関係してきます。
また、ストレスや危険を感じるとノルアドレナリンという物質が分泌され集中力や注意力が高まります。
これらの神経伝達物質は、タンパク質(アミノ酸)を主材料として、これにビタミンB群や鉄、ナトリウムなどの栄養素の助けをかりて合成されています。
そのため、主材料となるタンパク質やその他の栄養素が食事から不足すると、おのずとこれらの神経伝達物質も正常に生合成することが出来なくなり、集中力や気力の低下、落ち込みやすいなどの心の不調にも繋がってきます。
◎集中力を作る食べ方のポイント
私たちの呼吸や心拍、血圧といった、生きていく上で必要な身体機能は、自律神経という神経系により自分の意思とは関係なくコントロールされ保たれています。
自律神経には、交感神経と副交感神経という2種類があり、交感神経は興奮や緊張、ストレス時に優位になり、副交感神経はリラックス状態の時に優位になります。
勉強においては集中力や意欲が高まる時には交感神経が活発になり、反対に疲れて眠たい時には副交感神経が活発になり集中力は低下します。
◆分食のすすめ
食物の消化活動もこの自律神経によってコントロールされており、食べ物の消化・吸収は副交感神経により促進されるため、お腹いっぱい食べたり、一度に多く物を食べたりするとその分、消化・吸収するために副交感神経優位の時間が長くなります。
集中して勉強したい場合には、できるだけ副交感神経を優位にさせないように、一回の食事量を減らし何度かに分けて食事を摂る「分食」もおすすめです。
◆ながら食べはNG
時間がもったいないからと勉強をしながら食事を摂った経験はありませんか?
勉強だけでなくテレビや携帯など他のことに集中しながらする食事も同様ですが、脳を働かせて集中力を高める交感神経と、消化を促し栄養素をしっかり吸収するための副交感神経は同時に働くことが出来ません。
そのため、何かをしながら片手間に食事を摂ることは、どちらにとっても効率が悪くなるため「ながら食べ」は避けましょう。
◆メリハリをつける
もう少し頑張りたいからと長時間勉強をすることもあると思いますが、集中力が落ちて疲れた状態ではよいパフォーマンスに繋がりません。
勉強の効率を考えたときに、交感神経を活発にし集中力を高めることに意識がいきがちですが、そのためには質の良い休息が欠かせないのです。
睡眠時や休憩時、食事の際には副交感神経が活動しやすいように、リラックスできる環境を整えたり、時間に余裕をもたせたりなどを意識して、ONとOFFのメリハリをつける事も重要です。
勉強に疲れた時は寝て休息をとることに集中するのも良いかもしれません。
睡眠は心身を休めるだけでなく、脳を休息させ学習した記憶を定着させるためにも必要なことです。
◎糖質の摂り方
食後に眠たくなったり、ぼーっとしてなかなか勉強に身が入らなかったりということはありませんか?
これには、食事で摂る糖質が大きく関係していることがあります。
砂糖や炭水化物に含まれる糖質は体内で素早くエネルギーに変わる反面、血糖値を上昇させる特徴を持っています。
この血糖値は多くの糖質を一気に摂ったり、糖質単体で摂ったりすることなどで急激に上がります。
血糖値は急激に上がると、その分急激に下がり、血糖値が低くなると身体はエネルギー不足と判断し、脳へのエネルギー(ブドウ糖)供給も減少させます。
その結果、食後の眠気や、だるさ、集中力の低下などさまざまな不調が見られてきます。
そのため、糖質は以下のような注意点を踏まえて摂取するように意識しましょう。
- ◉糖質のみの食事や補食は避ける
→ 必ずタンパク質や野菜などの食材も一緒に摂取。 - ◉精製された糖(砂糖)は避ける
→ 糖質の中でも精製された糖は特に血糖値を急上昇 させやすいため注意が必要。 - ◉食事は食べる順番を意識する
→ まずは副菜・主菜を摂取し、最後に主食の順に摂取。 - ◉空腹時の糖質摂取は注意が必要
→ 空腹時間が長くなると、その分血糖値も上昇しやすくなるため、そのタイミングでお菓子や、麺類、おにぎりだけといった糖質単体の食事は、血糖値の急上昇を招くため注意が必要。
<レシピ>
~包まず簡単!エビとワンタンの卵スープ~
【材料】(4人分)
- ・むきエビ……120g
- ・卵……2個
- ・長ねぎ……1本
- ・ニラ……4本
- ・にんにく……1/2片
- ・ワンタンの皮……10枚
- ・ごま油……大さじ1
- ・水……400ml
- ▼▼▼ A ▼▼▼
- ・顆粒鶏ガラスープ……大さじ1
- ・しょうゆ……小さじ1
- ▲▲▲ A ▲▲▲
- ・片栗粉……小さじ1(水……小さじ1)
【作り方】
- ① 長ねぎは小口切りにし、ニラは食べやすい長さに切る。にんにくはみじん切りにする。
- ② 鍋にごま油をひき、にんにくを加えて中火で香りがたつまで熱したら、長ねぎを入れてしんなりするまで炒める。
- ③ むきエビを加えて軽く炒めたら、水を加えて沸騰したらアクを除いて弱火にする。
- ④ Aの調味料とニラ、ワンタンの皮を三角形に折って加え、水溶き片栗粉でとろみをつける。
- ➄ 最後に、卵を溶いて全体に回し入れ、ふんわりと固まってきたら出来上がり。
*お好みで黒こしょうをふっても美味しく召し上がれます。

卵やエビなどタンパク質を豊富に使いつつ、野菜も摂れ、小腹がすいた時の補食としてもピッタリな食べ応えのあるスープにしました。
消化にも優しく、塾帰りの遅い夕食や夜食にもおすすめです。
~豚と水菜のきな粉みそマヨ和え~
【材料】(4人分)
- ・豚肉薄切り……150g
- ・水菜……80g(2~3茎)
- ・きゅうり……1本
- ・新玉ねぎ……1/2個
- ・塩こんぶ……2g
- ▼▼▼ A ▼▼▼
- ・マヨネーズ……大さじ2
- ・きな粉(無糖)……大さじ1
- ・みそ……大さじ1
- ・みりん……小さじ2
- ・おろしにんにく……小さじ1/2
- ▲▲▲ A ▲▲▲
【作り方】
- ① 新玉ねぎは薄くスライスしてバットなどに広げて、30分以上置いて辛みを抜く。
- ② 豚肉は沸騰したお湯でさっと色が変わるまで茹でて、ざるにあげる。
- ③ 水菜はよく洗って食べやすい長さに切り、水気をきる。きゅうりは千切りにする。
- ④ Aの調味料を混ぜ合わせる。
- ➄ ボウルに豚肉、水菜、きゅうり、新玉ねぎ、塩こんぶを入れて混ぜる。
- ➅ Aを加えて全体をよく和えたら出来上がり。

神経伝達物質の原材料となるトリプトファン(アミノ酸)が豊富なきな粉やみそを使い、タンパク質も野菜も美味しくしっかり摂れる一品にしました。
今が旬の新玉ねぎの甘さと、水菜のシャキシャキとした食感がアクセントとなり、きな粉やみそのコクは残しつつも、クセがなく食べやすいですので是非一度作ってみて下さい。