2024年の中学入試から、今回は甲陽学院中について振り返ります。今年度の受験データを細かく分析、各科目の傾向やポイント、2025年の受験対策等について徹底解説いたします!
CONTENTS:
1.甲陽学院中2024年入試の特徴
■試験の難易度
昨年の甲陽学院中の入試は大きく難化し、ここ数年で最も難しい試験でしたが、2024年の今年はさらに難化しました。要因は算数の大幅な難化です。
昨年の試験では一昨年に比べ合格者平均点が約30点も下がり、大きく難化したと話題になりましたが、今年はさらに14.4点も下がり、294.0点でした。500点満点の試験で合格者平均点が300点を割り込むのは2012年以来です。
■試験時間と配点
甲陽学院中入試は灘中入試と同様に2日間入試で、1日目に国語・算数・理科の3科目、2日目に国語と算数の2科目を受験します。
試験時間と配点は、全試験各55分の各100点満点の合計500点満点で評価されます。
2.2024年甲陽学院中の入試データ
(前年比)<人>
|
2022年 |
2023年 |
2024年 |
募 集 人 員 |
200 |
200 |
200 |
志 願 者 数 |
344(-66) |
381(+37) |
394(+13) |
受 験 者 数 |
327(-53) |
366(+39) |
373(+7) |
合 格 者 数 |
211(-4) |
221(+10) |
220(-1) |
実 質 倍 率 |
1.54 |
1.66 |
1.70 |
甲陽学院中入試は、灘中と同じ試験日の2日間入試ということもあり、最難関中学の中ではさほど倍率も高くありません。2022年入試は、志願者・受験者ともに大きく減少し、実質倍率も大きく下がりましたが、今年は2年連続で増加し、2021年くらいにまで持ち直しました。
他の最難関校に比べ、比較的倍率は高くはないとはいえ、やはり難度の高い最難関レベルであることに違いはありません。
3.甲陽学院中志願者の受験日程パターン
甲陽学院中志願者の受験日程パターンを表したものが下記の表です。
前受け校 |
・愛光(愛媛) ・北嶺(北海道) ・函館ラ・サール(北海道) |
|
1日目<甲陽> 1/13(土) |
2日目<甲陽><併願校> 1/14(日) |
3日目以降<併願校> 1/15(月) |
国語(55分・100点) 算数(55分・100点) 理科(55分・100点) |
国語(55分・100点) 算数(55分・100点) |
・東大寺学園(奈良) ・洛南高等学校附属(京都) ・淳心学院(兵庫) ・清風後期(大阪) 【4日目以降(1/18~)】 ・六甲学院B(兵庫) ・白陵後期(兵庫) ・関西学院B(兵庫) ・神戸大附属(兵庫) ・洛星後期(京都) |
【午後】 ・西大和学園(奈良) ・高槻B(大阪) ・須磨学園3(兵庫) |
甲陽学院中の受験日程は、例年通りの2日間入試で、統一入試日初日(今年は1月13日)に「国語と算数と理科」の試験、2日目(1月14日)に「国語と算数」の試験が行われました。
甲陽学院中受験者は、統一入試日前に前受けとして愛光、北嶺、函館ラ・サールなどを受験し、統一日初日と2日目の午前で本命の甲陽学院中を受験します。
2日目の午後に西大和学園か高槻B、または須磨学園3回目を受験し、3日目に東大寺学園、洛南高附、淳心学院後期、清風後期などを受験する併願パターンが多く見られました。
3日目の夕方には甲陽学院の合格発表がありますので、合格していればこれで終了となりますが、不合格だった場合は4日目以降に六甲学院B、白陵後期、関西学院B、神戸大附属、洛星後期などを受験するパターンが多いようです。
4.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の甲陽学院中合格者数は多い順に下記の通りでした。
(前年比)<人>
浜学園 |
希学園 |
日能研 |
馬渕教室 |
88(+5) |
41(-16) |
34(-2) |
30(+2) |
進学館 |
SAPIX |
第一ゼミナール |
能開センター |
13(-6) |
13(+2) |
4(-2) |
3(-2) |
今年も浜学園が他塾に大きく差をつけました。浜学園の合格者数トップの座は毎年ずっと変わらないものの、ここ数年増減を繰り返しています。昨年は14名減少しましたが、今年は5名増加しています。来年度はどうなるのか注目です。
昨年20名以上合格者を増加させ、浜学園への肉迫が期待された希学園ですが、今年は大きく減少することになり、浜学園との差がまた広がっています。
5.科目別平均点
甲陽学院中合格者の各教科の平均点と受験者平均点との差を表したものが下記の表です。
(前年比) <点>
|
受験者平均 |
合格者平均 |
合格者平均との差 |
合格者最高点 |
国 語 |
117.9(+0.5) |
124.8(-0.7) |
6.9(-1.2) |
160(-5) |
算 数 |
88.9(-11.9) |
101.6(-13.4) |
12.7(-1.5) |
163(-11) |
理 科 |
62.5(-1.7) |
67.6(-0.3) |
5.1(+1.4) |
93(+6) |
※国語、算数は各200点、理科は100点の計500点満点
2024年の甲陽学院中入試は「難化した」と言われますが、上記のように国語と理科に関しては昨年と比べさほど大きな差はありません。
算数入試は昨年、受験者平均や合格者平均が30点以上下がり、ここ数年で見ても難しい試験でした。その反動で今年は易化するのではという予想を大きく覆し、さらに10点以上下がりました。
通常算数では受験者平均と合格者平均の差が15点前後は出るのですが、ここまで難化すると差もあまりつかなくなることが上記表からもわかります。
それでもやはり国語や理科に比べると、算数は差のつく教科であることに違いはありません。
6.科目別の傾向と対策
今年度の甲陽学院中入試を参考に、教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語
【試験時間・配点と構成】
試験時間と配点は、1日目、2日目ともに試験時間55分の100点満点の試験。問題用紙はB4用紙2枚で、長文読解の大問2題構成となっています。
大問1は論説文または随筆、大問2が物語文というパターン。今年の1日目は論説文と物語文、2日目に随筆と物語文でした。
1日目と2日目とで構成が大きく変わる灘中とは違い、2日間とも同じような問題構成になっているのが甲陽国語入試の特徴です。
【難易度】
2024年の甲陽国語入試1日目は、昨年に比べてやや易化しましたが、2日目は逆にやや難化しました。2日間の国語全体では昨年並みの難易度でした。ここ数年と比べても概ね例年並みの難易度でした。
【傾向と対策】
・漢字
漢字は単独問題ではなく、長文読解問題の中の小問として出題されます。灘や東大寺に比べると難易度は高くありませんので、確実に得点しておきたい問題です。
・記述
漢字と語句以外はほとんどが記述解答です。甲陽の記述は字数制限がなく、解答欄の大きさから解答字数を判断するというものがほとんどです。従って、多くの字数を書く力と短く端的にまとめる力の両方が必要です。
これまでの模範解答などを見ると、1行当たり25文字前後くらいがひとつの目安となります。甲陽の国語は7割弱が記述解答ですから、甲陽を第一志望にするなら記述対策は必須となります。
記述解答は部分点がもらえる可能性があります。少々的外れな答えであっても、キーワードをしっかり押さえていれば、得点になる可能性は十分にあります。どん欲に1点を取りにいく姿勢が必要です。間違っても白紙解答にするのだけは避けましょう。
・物語文
甲陽学院中の物語文の問題は例年、小学生には登場人物の心情を理解するのが難しいと思われるような問題がよく出題されます。とくに男子は苦手に感じる生徒が多いので、大人向けの小説を読むなどして、少し大人の思考を持ち合わせておくほうがいいでしょう。
甲陽を受験するのであれば、ふだんから小学生が読むには少し難しいくらいの文学にも慣れておき、登場人物の心情をしっかり追っていけるような演習をしておきましょう。
◆算数
【試験時間・配点と構成】
甲陽学院中の算数入試は、国語と同様に2日間同じような問題構成で、1日目、2日目ともに試験時間55分の100点満点の試験です。
B4用紙2枚の問題用紙に解答欄もあって、問題用紙に直接記入する形式です。
問題数は1日目、2日目ともに大問6題構成で、小問数は15~16問でした。
【難易度】
甲陽算数は、昨年大きく難化しましたが、2024年の今年はさらに大きく難化しました。
昨年は一昨年に比べ受験者平均点も合格者平均点も30点以上さがりましたが、今年はさらに10点以上下がり、たいへん難度の高い試験となりました。
特に1日目の受験者平均点は41.8点と、過去20年間でも最も低い点数でした。2日目も受験者平均点が47.1点と、過去20年間で3番目に難度の高い試験でした。
1日目の算数で全く手ごたえがなく、落ち込んで迎えた2日目も難しい試験という状況で、精神的にきつかった受験生も多かったのではないでしょうか。最難関レベルの合格を勝ち取るには精神的にも強くないと厳しいでしょう。
【傾向と対策】
例年、平面図形、立体図形、速さ、数の性質、場合の数の単元がよく出題されています。
解答欄は解き方や途中式を書かせる問題も多いので、ふだんから解き方をしっかり書くクセをつけておくことが大切です。
得点となるための書き方対策は必須で、採点者にも見やすい書き方の練習をしておく必要があります。今年度のような点数の取れない試験では、途中式や解き方でいかに1点2点を積み重ねることができるのかが勝負の分け目となります。
問題は難易度順に出題されるわけではありません。難易度の高い問題が前半に出題されることもあり、そこで時間を費やしてしまうと、後半の解きやすい問題にまで行きつかないまま終わってしまいます。時間がかかりそうな問題は飛ばして次に進むなど、問題の取捨選択もとても大事です。
今年度も1日目の前半の大問2の小問2は難問でした。「前半に難しい問題があるはずがない」と、勝手に前半は易しいと決めつけ、時間をかけすぎた受験生も少なくなかったのではないでしょうか。
「難しい問題に時間をかけすぎず、できる問題から解く」という基本的な「試験の受け方」を前もって実践しておくことが大切です。
◆理科
【試験時間・配点と構成】
甲陽の理科入試は、試験時間55分の100点満点の試験で、今年も例年通り大問6題構成でした。物理と化学の分野から各2題、生物と地学の分野から各1題の6題という構成も例年通り。小問数は例年60問前後で、昨年は62問でしたが、今年は63問とやや多めでした。
【難易度】
2022年、2023年と2年連続で易化していましたが、2024年の今年は昨年並みで、やや難化した程度の試験でしたので、例年と比べると比較的取り組みやすい内容だったのではないかと思われます。
今年は短文で答えさせる記述解答の問題が10問ほど多く出題されました。記述や作図問題は、毎年数題出題されていますので、対策は必須です。やや減少傾向にあった計算問題が増加し、例年並みに戻りました。
今年もそうですが、例年物理と化学の分野の難易度が高く、生物と地学の分野は比較的取り組みやすい傾向にあります。
ここ数年、受験者平均点と合格者平均点の差が5点にもならない試験が続いていましたが、今年は5.1点で、甲陽学院の理科にしては差が開く結果となりました。
【傾向と対策】
甲陽学院の理科入試は、55分で60問前後の小問を解き切る試験です。前述の通り、今年もそうですが地学・生物分野の問題は比較的解きやすい問題が多いので、ここで時間をかけずに、物理・化学分野に時間を残せるようにすることがポイントです。
今年も物理分野でも化学分野でも、繁雑な計算を要する問題が出題されました。算数同様に計算力の精度とスピードが求められます。
今年は化学が2問ともあまり見られない問題で難しかったと思いますが、物理では最後の大問6の振り子の問題が比較的解きやすかったと思われます。
途中の難問に時間を費やしすぎて大問6で時間が無くなるのは、たいへんもったいないことです。問題を解き進める順序や取捨選択は、日ごろから多くの演習を重ねることで身につきます。
算数もそうですが、理科も易しい問題から順に並んでいるわけではありません。後半に解きやすい問題が出題されていることも多くあります。過去問や問題集などでしっかり演習量をこなしておきましょう。
7.まとめ~甲陽学院中合格への道~
甲陽学院中は、灘中と並び、関西圏最難関中学と位置付けられている中高一貫の男子校です。春は桜のトンネルのできる夙川沿いの遊歩道を通学し、学校は芦屋市との市境の西宮の閑静な住宅街にあり、たいへん恵まれた環境にある学校です。
より体系的に学習できる6年一貫カリキュラムで、高度な学力と体力を育成しています。
授業の進度はたいへん速く、中学1年間で中学3年分のカリキュラムを終わらせるとも言われています。
関西の最難関中学の中では、毎年比較的倍率は低めで1.7倍前後ですが、2年連続で受験者が増え、試験内容も難化しています。倍率が低いからと言って、簡単に入学することができない最難関校であることに違いはありません。
総合進学セミナーには甲陽学院に特化して指導できる講師も多く在籍しています。毎年のように甲陽学院中志望の受験生を指導しているため、入試傾向にも精通しています。お子さま1人ひとりの現状を踏まえ、入試までの限られた時間を無駄のない効率的な指導で合格を目指します。
甲陽学院中受験はもちろん、併願校の選定など、中学受験全般に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
甲陽学院中対策ならお任せください!
保護者の方の疑問にお答えし、不安を解消する